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猪浦道夫の外国語とつきあう方法

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猪浦道夫(いのうら みちお)
翻訳家。横浜市立大学、東京外国語大学イタリア語学科卒業後、同大学大学院修士課程修了。イタリア政府留学生としてローマ大学留学。帰国後、ポリグロット外国語研究所を主宰。著書に『英語冠詞大講座』『語学で身を立てる』『3語で話すスペイン語』などがある。

第57回 助動詞 can(1)・・能力を表わす用法


 例によって、最初に簡単な作文をやってみて、皆さんの問題意識をチェックしてみたいと思います。次の日本語を英語で書いてみてください。

1)彼は車の運転ができます。

2)車は運転できますか。

3)あなたは少し習えば車を運転できるでしょう。

4)おまえがもし1週間で車を運転できるようになるなら、一台買ってあげるよ。

5)彼が車を(能力的に)運転できるかどうか彼女にはわからない。

6)彼はきのう運転免許試験に受かることができた。

7)彼は、私が彼らをそこに連れて行ってくれるよう頼んだとき、車を運転できた(のでそうしてくれた)。

8)彼は若いときは車を運転できた。

9)彼はきのう車を運転できなかった。

10)僕の車はきみの車より速く走れる(スピードが出る)。


 英語の話法の助動詞 modal auxiliary は複雑怪奇です。その原因ははっきりしていて、1066年のノルマン人の征服後にフランス語の影響を受けたからです。特に can の場合は、「知っている」というのが原義でしたが、「能力」の意味も引き受けて「可能性」といっしょにあまりにも意味範囲が広くなりすぎてしまったこと、それから「過去形」の could が、直説法の can の過去、仮定法(接続法)の can の過去、そして現代フランス語では条件法と呼ばれる法の動詞で表されている用法(これは昔は仮定法の過去で表現していました)をやはり could で表現しているからです。

 つまり could do という語形には質の異なる3つの用法がごちゃごちゃになっているのです(実は、昔の英語の参考書のなかにはこの事実をちゃんと指摘しているものがありましたが、最近の参考書にはまったくこのようなことが記述されていません)。従って、「could の用法」というような切り口でこの助動詞の用法を解明しようとしてもたぶん埒があかないでしょう。

 しかし、この問題を説明しようとすると専門的になりすぎるので、このコラムでは「意味」別に実践練習しながら習得していただくよう試みてもらいたいと思います。

 助動詞 can は、意味内容から主要な用法を分類すると、(1) 能力を表わす、(2)可能性や推量を表わす、(3) その他派生的意味(依頼、提案、命令)を表わす、場合に分けるのがよさそうです。今回はまず「能力」に関連する表現の問題点を明らかにしてみましょう。

 では、冒頭に出題した問題を解説していきましょう。

【解答と解説】

1)彼は車の運転ができます。

 He can drive a car.

これはもちろん He is able to drive a car. とも言えますが、現在形では can を使うほうが一般的です。また、現実の会話場面では、「(もし必要とあれば)彼は運転してくれますよ(運転代わってくれますよ)」のような意味で使うほうが多いぐらいです。


2)車は運転できますか。

 Can you drive a car?

これももちろん Are you able to drive a car? と言えないことはありません。また、相手があまり親しくない人で、あからさまに能力を問うている感じを出したくなければ Do you drive a car? とするほうがいいでしょう。また、現実の会話場面では、「運転代わってくれる?」のような意味で使うこともしばしばです。


3)あなたは少し習えば車を運転できるでしょう。

 You will be able to drive a car if you learn a little.

未来形にするには be able to の助けを借りて言うしかありません。


4)おまえがもし1週間で車を運転できるようになるなら、一台買ってあげるよ。

 If you can drive a car in a week, I will buy you one.

この場合は未来と言っても時の副詞節内ですので現在形で表します。(この用法は、古い仮定法現在の用法の名残です。現代英語では一般動詞の場合、3人称単数では -s をつけますが、これは本来は誤用です)


5)彼が車を運転できるかどうか彼女にはわからない。

 She can’t tell if he can drive a car.

この問題は主節の方がポイントです。can’t know は誤りですので要注意。


6)彼はきのう運転免許試験に受かることができた。

 He was able to pass his driving test yesterday.

「~する能力があり、そのため実際に1回こっきりの行為をできた」というニュアンスのときは could は不可です。このケースで could を使うと仮定法のcould になってしまい、「(受験すれば)受かることができるのに(実際にはしない)」という意味になってしまいます。


7)彼は、私が彼らをそこに連れて行ってくれるよう頼んだとき、車を運転できた(のでそうしてくれた)。

 He was able to drive a car when I asked him to take them there.

この文脈で could を使うと、「能力的にできた」という意味にもとれなくはないが、やはり常識的には「能力的に、または状況的にできるのにそうしてくれないのだ」という意味にとられるでしょう。


8)彼は若いときは車を運転できた。

He could drive a car when he was young.

この文は前2問と逆で、習慣的アスペクトとして「~できる能力をもっていた」ですから could を使います。


9)彼はきのう車を運転できなかった。

 He couldn’t (was not able to) drive a car yesterday.

前問3題のケースで、否定形の場合はいずれも可能です。それでも couldn’t には「もともとその能力がなかった」というニュアンスが含まれます。


10)僕の車はきみの車より速く走れる(スピードが出る)。

My car can run faster than yours.

この能力を表わす用法は、主語がモノの場合も使用可能で、本問題はその一例です。


 最後に、特に勉強熱心な方のために、少し説明を足しておきましょう。フランス語やドイツ語をご存知ない方にはわかりにくいとは思いますが、参考までに。

 まず、この助動詞の意味範囲に関してです。上述のように、can は昔は「知っている」というのが原義でした。ですから今回の問題のように、「~する術を知っている>できる」というような能力を意味するのが本来の意味なのです。ところが、いつの頃からか(次回取り上げようと思っていますが)ここに「可能性や推量」を表わす用法が加わってしまいました。この意味は、英語以外の多くの欧州言語では別の助動詞で区別されるのです。この「可能性」を意味する用法からはさらに「許可」を表わす用法も派生しますから、ますます意味的に守備範囲が広くなってしまったということです。

 ところが、我が日本語もこの点は英語に似ていて、「~できる」は能力と可能性の両方を意味するので、日本人学習者はこの can の用法にあまり疑問を感じないのでしょうか、何となくそんなに難しい助動詞だとは感じないようです(感じていたら、あなたは相当真摯に英語を勉強してきたからです)。be able to などという語法が広く使われるようになった原因のひとつは、ある意味、この意味範囲の広さを少しでも整理しようとしたことに起因していると言えます。


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