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猪浦道夫の外国語とつきあう方法

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猪浦道夫(いのうら みちお)
翻訳家。横浜市立大学、東京外国語大学イタリア語学科卒業後、同大学大学院修士課程修了。イタリア政府留学生としてローマ大学留学。帰国後、ポリグロット外国語研究所を主宰。著書に『英語冠詞大講座』『語学で身を立てる』『3語で話すスペイン語』などがある。

第68回 助動詞 would とshould (2) 仮定文における用法


 今回は、仮定文に現れる would, should を観察してみます。まずは、例によって、腕試しで次の日本語を英語で書いてみてから、解説をご覧ください。

【課題】

1.もしいま晴れていたら、私たちはドライブに行くところなのですが。

2.もしいま晴れていたら、私たちはドライブに行けるのですが。

3.昨年もし私がたくさんお金を持っていたら、長いバカンスをとっていたでしょう。

4.昨年もし私がたくさんお金を持っていたら、長いバカンスをとっていたかもしれません。

5.ピーターならそんな脅迫状めいた手紙を書かなかっただろう。

6.(実際にはやろうとしない相手に対して)できるだけはやく返事を書いたほうがいいと思うよ。

7.優しい男の子ならお年寄りが重い荷物を運ぶのを手伝うだろう。

8.万一雪が降っても試合が延期されることはないでしょう。


 今回は、先に、期待されている訳例と解説を記します。

【課題の訳例と解説】

1.もしいま晴れていたら、私たちはドライブに行くところなのですが。

 If it were fine now, we would go for a drive.

 現在の事実に反する仮定の仮定節内では動詞が仮定法過去になります。その帰結節では would do など「助動詞の過去形+不定詞」の語形が用いられます。英国英語ではwould の代わりに should を用いる言い方もされます。

2.もしいま晴れていたら、私たちはドライブに行けるのですが。

 If it were fine now, we could go for a drive.

 前問と同じ文構造で、助動詞を could に変えてみました。趣旨を後ほど説明します。

3.昨年もし私がたくさんお金を持っていたら、長いバカンスをとっていたでしょう。

 If I had had much money last year, I would have taken a long vacation.

 過去の事実に反する仮定の仮定節内では動詞が仮定法過去完了になります。その帰結節では would have done など「助動詞の過去形+完了不定詞」の語形が用いられます。この場合もやはり、英国英語では would の代わりに should を用いる言い方もされます。

4.昨年もし私がたくさんお金を持っていたら、長いバカンスをとっていたかもしれません。

 If I had had much money last year, I might have taken a long vacation.

 前問と同じ文構造で、助動詞を might に変えてみました。趣旨を後ほど説明します。

5.ピーターならそんな脅迫状めいた手紙を書かなかっただろう。

 Peter would never have written such a threatening letter.

 この例のように、仮定節が省略されているケースもあります。事実上、仮定節の代わりになる表現があるか、明らかに前提として感じられれば、上記と同様の形式は用いられるのです。

6.(実際にはやろうとしない相手に対して)できるだけはやく返事を書いたほうがいいと思うよ。

 It would be better to answer a letter as soon as possible.

 この文も仮定節が略されているわけですが、文脈によっては、相手がするかしないかわからない場合も考えられます。この場合は、単に it’s better を控え目に表現したものととることもできます。

7.優しい男の子ならお年寄りが重い荷物を運ぶのを手伝うだろう。

 A kindhearted boy would help old people carry their heavy baggage.

 ここでは、不定冠詞付きの名詞が事実上の仮定節の代わりをしていることがわかりますね。

8.万一雪が降っても試合が延期されることはないでしょう。

 Even if it should (ever) snow, the game will(would) never be postponed.

 (even) if, (just) in case などに導かれる節は「仮に(万一)〜であっても、たとえ〜であっても」といった「強い(起こりそうもない)仮定」を表します。古くはこれを「仮定法未来」と呼んでいましたが、今日ではこうした文法用語はほとんど使われていないようです。

 この文型にはいくつかコメントすることがあります。

1) 仮定節内はshould の代わりに were to を使うとさらに強い仮定の気持ちがでます。

2) 帰結節の部分は、仮定節に仮定のニュアンスが強ければ would(should) つまり仮定法過去、単なる条件を表すニュアンスのときは will(shall) を使うのが普通です。なお、shall を使うのは主として英国英語です。

3) 仮定節に「倒置文」を使うとより不確実な響きになります。 cf. Should it snow,...

4) 仮定節に ever を使うと強調になります。

5) 仮定節では否定形は使えないので、この場合は「倒置文」による仮定表現を使います。 cf. Should it not be fine,...(たとえ晴れなくても)

6) この表現が現在のことに関する仮定にも用いられることがあります。cf. If you should be interested in this play, I’ll take you to the theater. (もしこの作品に興味があるなら、劇場にご案内しますよ) ただし、このケースでは、仮定節の実現に可能性があるわけですので、この使い方はいわゆる「仮定法現在の代用の should」の用法と考えるべきというのが、筆者の考えです(この用法については、次回扱います)。

 さて、1. から 4. までの問題に関してですが、少しコメントしておきたいことがあります。1. や 3. のように、「would または should + 不定詞」の形式は、ひとむかし前の英語の参考書ではしばしば「帰結法」と呼んで、「仮定法」とは区別していました。形式をまとめると次のようになります。

 would (should) + 不定詞: 帰結法現在(または単純形)
 would (should) + 完了不定詞(=have + p.p.): 帰結法過去(または複合形)

 筆者は、このネーミングを妥当なものと考えています。もっとも、この形式を、フランス語、イタリア語、そして最近ではドイツ語でも「条件法」と呼んでいるので、「帰結法」よりは「条件法」の訳のほうがよいとは思います(ついでに言えば、英語の「仮定法」という用語は世紀の誤訳だと思っています。英語の呼び名は subjunctive であり、「仮定」の意味はありません。筆者としては、「従属法」または、せめて「接続法」という訳語に変えてほしいと思っています)。

そして、実際、これらの形式は、中世から近代にかけてフランス語の条件法過去(=直説法過去未来)のカルク(借用翻訳)によってできたに違いありません。すなわち、本来「意思」、「必然」を著した助動詞 will, shall の転用によって「未来形」を創造し、これらの過去形 would, should を利用することによって「過去未来形」を創造し、それがフランス語における条件法への発展とともに「帰結法」として使われるようになったというわけです。

 ところで、大昔の英語では、未来形や帰結法(過去未来形)が存在しなかったわけですから、仮定表現では、従属節でも主節でも「仮定法過去」が用いられていました(この形式は、現代ドイツ語において文章語としてはまったく普通の言い方として保存されています)。つまり、現代英語でそのイメージを示すと、次のようになるわけです(* は実際には使われない英文を意味します)。

 *If it were fine, I went there. (下線部を仮定法過去と考えてください)

 この文が、上に説明した帰結法が導入されることで If it were fine, I would go there. となるわけです。 

 しかし、このコラムで再三申し上げているように、will はかつて「〜したい」の意味の助動詞でしたので、古い英語では、可能性の残る意味の帰結節を次のように表現したはずです。

 If it be fine, I will go there.(晴れているなら行きたいと思う)
 If it be fine, I can go there.(晴れているなら行くことができる)

 この帰結節の部分を、現時点で可能性のない事柄の記述にすると、will, can の仮定法過去はそれぞれ would, could ですから、次のようになります。

 If it were fine, I would go there.(晴れているなら行きたいと思うのだが)
 If it were fine, I could go there.(晴れているなら行けるところなのだが)

 もうお分かりいただけたでしょうか。要するに、would do, should do の形式に関しては、will do, shall do の「仮定法過去」(行きたいと思うのだが)なのだか、それとも do の「帰結法現在」(行くところなのだが)だか、判然としないのです。

 これに対して、could do, might do のほうは、can do, may do の純然たる仮定法過去の流れをくむものだということです(must については、次回お話しする理由により、また別の問題が発生するのでここではノーコメントとしておきます)。

 たぶん、読者諸氏のなかにはこの説明がよくわからないという人もあろうかと思いますが、私が言いたかったことは、ことほど左様に英語の助動詞の過去形というのは、二重、三重に複雑骨折していて、英語学者もこれらの用法を体系的にきれいに説明することに成功しているとは言いがたいほど複雑怪奇なものであると言うことです。

 たぶん、言語学的アプローチにまで興味のない方は、現実の用法を遮二無二覚えこんだほうが学習効率はよいかもしれません。しかし、将来文芸翻訳やシナリオなどの翻訳を志す方は、少しばかりフランス語の動詞の法と時制の体系と英語のそれを比べてみることを強くお勧めします。すると、かなり英語の would, should の正体がわかってきて、微妙な心理の「あや」が直感できるようになること請け合いなのです。

  次回は、仮定表現以外の用法、特に婉曲語法について考えてみます。今回お話ししたことが、さらに氷解してくると思います。


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