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グレッグ・アーウィンの「英語ことのはぐさ」 | 英語翻訳ならDHC総合教育研究所

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グレッグ・アーウィンの「英語ことのはぐさ」

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ことのは - ぐさ 【言の葉種】
1. 言葉による表現。また、和歌。
2. 話のたね。言いぐさ。

日本の童謡・唱歌の翻訳を通じて、日本語・日本文化の新たな一面を見つけましょう。勉強や仕事で「疲れたな」と感じたら、ぜひここに来てリラックスしてください。

グレッグ・アーウィン
日本の童謡・唱歌を自らの視点で英訳し、100曲以上手がけている。日本各地でコンサート等の活動を行う他、テレビ・ラジオ・声優・司会など幅広い活動を行う。2002年に日本童謡協会『童謡文化賞』を受賞。2004年には舞台「お江戸でござる」「のど自慢」に出演。現在発売中のCD「Gentle Heart」(Akua Music)では多くの人の心の中に癒しと感動を与える。また、中学校副読本2(道徳)に本人が英訳した「紅葉」が掲載。現在、ランダムハウス講談社からCD付絵本『グレッグ・アーウィンの英語で歌う、日本の童謡』が好評発売中。DHC通信講座「日本人のためのリスニング講座〜発音上手は聞き上手〜」ではナビゲーター役を務める。
http://www.gregirwin.com こちらも要チェック!

Vol. 24 おぼろ月夜 〜The Misty Moon of Spring〜

 いまから5年ほど前。私は、愛知万博のコンサートで童謡を歌う機会がありました。このとき歌った中の一曲が、今回ご紹介する「おぼろ月夜(The Misty Moon of Spring)」です。この歌は、私が思うもっとも美しい童謡の中のひとつです。そのコンサートが終わると、私の楽屋(the dressing room)の入り口にはたくさんのお客様が待っていてくださいました。しばらくすると、その中の一人の女性が自身の身の上話をして、突然泣き出してしまいました。彼女は毎週日曜日になると、家族でドライブに出かけ、車の中ではみんなで童謡を歌っていたそうです。彼女の家の近くには菜の花畑があり、菜の花が満開になると、お父さんはいつも車をそばに止めてこの「おぼろ月夜」を歌ってくれた、と教えてくれました。彼女のお父さんはもう亡くなってしまいましたが、いまではお父さんとの一番の思い出になっているとおっしゃっていました。そんな話をお聞きし、私はいたく感動して、童謡の魅力を改めて理解したのです。

 菜の花は、英語では書くのをためらわれるような変な言葉なので、私は冒頭の歌詞を、In the field / The flowers growing there / Have all turned into gold (花畑で育った花は、すべて黄金色に変わった)と訳しました。この歌の中で私が好きな英語の歌詞は、The dream of Spring unfolds(春の夢は開く)と、Gentle breezes sing a lullaby(優しいそよ風が子守歌を歌う)という部分です。英語ではとても美しく、ロマンチックに響きます。また、タイトルのMisty Moonの語感も英語ではとてもロマンチックなものです。

 2番の歌詞も1番のロマンチックなイメージを引き継ぎました。日本語の歌詞は、「〜も、〜も」と、おぼろ月夜の情景を羅列しているだけで外国の人には抽象的でわかりにくいと思ったので、英詞ではよりクリアーな文章に置き換えました。例えば「田中の小路を/たどる人も」などは In the field / The farmers walking there / Have always known the way (畑を歩く農家の人々は、生きる術を昔から知っていた)としました。田舎の人は皆、日々の暮らしをごく自然のままに過ごしています。この表現には、「月が出ている夜に、畑で二人が逢う」といった別の意味を含ませることもできます。「月」は日本の短歌などでもロマンチックなシンボルとして使われてきたと思いますので、最後は、How I long to meet you there tonight / ’Neath the misty moon of Spring (春のおぼろ月夜の下で、今夜どれほど私があなたに逢いたいと願っているか)と締めくくりました。これは、もちろん原詩にはありませんが、とても余韻がある終わり方だと思いませんか?

 日本では「袖すり合うも他生の縁」という諺がありますよね? 最初に日本の童謡を英訳するように頼まれた頃の私には、「何か大切なこと」をしているという感覚はまったくありませんでした。けれども、いろいろな童謡を聴き、訳していくにつれ、実にさまざまな古き良き日本に出会うことができました。不思議なもので、いまでは私のライフワークとなっています。日本の童謡は、いまでも十分に価値のある作品です。私たちは、童謡という、この素晴らしい伝統をぜひ若い世代にもつないで行くべきだと思います。そしていつの日か、もっと多くの外国の人たちにも日本の童謡の存在を知ってもらえることができたらうれしいですね。

 さて、2年間お世話になりましたこのコラム。皆さん、楽しんでいただけましたでしょうか? 私にとって幸せな時間を皆さんとご一緒できたことを、心より感謝しております。今回で連載は終了いたしますが、これからも皆さんが童謡を愛し続けてくれることを心から願っています。いつかまた、皆さんにお会いできる日を楽しみにしています。本当にありがとうございました!

 I will miss you all very much!

The Misty Moon of Spring

English Words by Greg Irwin

In the field
The flowers growing there
Have all turned into gold
On the mountainside
And everywhere
The dream of Spring unfolds
When the sun
Begins to paint the sky
Oh what magic it will bring
Gentle breezes sing a lullaby
’Neath the misty moon of Spring

In the field
The farmers walking there
Have always known the way
Firelight and forest colors bear
The dream of yesterday
When the frog
Begins to sing his song
Then the temple bell will ring
How I long to meet you there tonight
’Neath the misty moon of Spring

おぼろ月夜

作詞/高野辰之   作曲/岡野貞一

菜の花畠に 入り日薄れ
見わたす山の端(は) 霞ふかし
春風そよふく 空を見れば
夕月かかりて におい淡し

里わの火影(ほかげ)も 森の色も
田中の小路を たどる人も
蛙(かわず)の鳴く音も 鐘の音も
さながら霞める おぼろ月夜