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マーリンアームズ株式会社の「まかじき亭別館」

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Vol.12 翻訳に「無駄」はない、「遅すぎる」ということもない

 武舎広幸(H)と武舎るみ(R)は、二十数年前、たいして考えもせずに勢いで会社を始めてしまったのですが、一応社長になったHは、まあそれでも、会社経営に関して何冊かの本を読むぐらいのことはしました。その時に読んだ内容のほとんどはきれいさっぱり忘れてしまいましたが、ある書店で立ち読みした本にあった次のフレーズだけは今でも記憶しています。そのフレーズとは、「人生に無駄というものはない」というものです。

 人生において「失敗してしまった、こんなことはやらなければよかった」と思うことは誰しもあるものですが、あとで振り返ると「その失敗があったからこそ次の失敗をせずにすんだ」と思うことは結構多いように思います。「前に無駄をしたことがあったがゆえに次の無駄をせずにすむ」というわけです。

 ところで、この「無駄というものはない」というフレーズですが、話を翻訳に限ってみると、もっとピンと来ることが多くなります。つまり「翻訳にとって無駄というものはない」というわけです。もう少し言葉を補って「翻訳にとって無駄な知識はない」としたほうがわかりやすいでしょうか。

 何が出てくるのかわからないのが翻訳という仕事の最大の面白さかもしれません。Hはスポーツが大好きで、野球にサッカー、陸上にテニス、ラケットボール、スカッシュといろいろかじったことがあります。このほか、自分でやったことはありませんが、アメリカンフットボールやラグビー、それにゴルフやスキーのジャンプなども大好きで、特に昔はよくテレビで見ていました。

 たとえば、コンピュータ関連の翻訳をしているときでも、スポーツはよく登場します。「まるでアメリカンフットボールの第4クオーターのようだ」とか「カクテル光線に照らされた野球場の芝生のような鮮やかな緑」などといったように、とくにアメリカで大人気のアメリカンフットボールや長い歴史をもつ野球の話題は頻繁に出てきます。最初の表現はアメリカンフットボールの試合を何回か見たことのない方には、何を言いたいのかまったくおわかりにならないでしょう(アメフトの試合の最後のクオーターである第4クオーターは、時計がとてもゆっくりと進むように感じます)。また、2番目の表現は野球場にナイターを見に行ったことのない方には実感が湧かないでしょう。

 英米人に映画好きの人は多く、コンピュータ関連の本にも、『スタートレック』や『2001年宇宙の旅』、スピルバーグ監督の作品などからの引用は頻繁に現れます。嫌いではないものの、スポーツに比べると映画に関する知識の乏しいHにとって、映画絡みの表現はなかなかの難敵です。ウェブで検索しても意味がよくわからない場合、映画が大好きで、昔からかなりの数の映画を見ているRにお伺いを立てると、あっという間に回答が得られることも多いのです(会社の「資料費」を使って、レンタルDVDを毎月何枚も借りているだけのことはあります...)。

 コンピュータ関連の翻訳をしていても聖書やマザーグース、シェイクスピアの作品などからの引用は出てきますし、逆に小説やノンフィクションを訳していても、最近の作品ならばパソコンや携帯電話、インターネットの話が登場しない話のほうが少ないくらいではないでしょうか。

 翻訳を本格的にやろうとすれば、程度の差こそあれ、誰でも「何でも屋」にならざるを得ないのです。そして、何でも屋になるためには、どうしても時間がかかります。

 これを逆から見ると「翻訳をやるのに遅すぎるということはない」ということにもなります。人生経験が必ず役立つのですから、数年、いや10年、20年、始めるのが遅くなったからといって、あきらめる必要はないのです。

 たとえば、長年会社勤めをなさった方が、定年を機に翻訳の勉強を始めたとしましょう。それまで仕事で得た知識は、優秀な翻訳者になるために大いに役に立つのです。仕事で英語を使っていたり、さまざまな文章を書いていたのならば、翻訳者になるための訓練をずっとしていたことにもなります。

 子育てや介護のために費やした時間も、著者の気持ちや登場人物の気持ちを理解するのにとても役立ちます。

 さて、「まかじき亭別館」で皆さんにお目にかかるのも今回が最後になりました。最後に、もう一度、次のフレーズを繰り返して、皆さんとお別れいたしましょう。

 翻訳に「無駄」というものはない、「遅すぎる」ということもない。

 今までお読みくださり、ありがとうございました。

マーリンアームズ株式会社
1993年設立。翻訳および言語処理関連ソフトウェアの開発を主な業務として行っている。文章に携わる人のための辞書・検索サイト DictJuggler.net で類語辞典および翻訳者用の訳語辞典を公開しているほか、株式会社DHCと共同でDHC翻訳力診断テストを開発。
マーリンアームズ株式会社のホームページはこちら

武舎広幸 (むしゃ・ひろゆき)
国際基督教大学、山梨大学大学院を経て、東京工業大学大学院理工学研究科博士課程修了(在学中、米国オハイオ州立大学およびカーネギーメロン大学に留学)。現在マーリンアームズ株式会社代表取締役。コンピュータ関連書や図鑑等の翻訳およびソフトウェア開発を行う。
著書に『プログラミングは難しくない!』(チューリング)、『理工系大学生のための英語ハンドブック』(三省堂)、訳書は『マッキントッシュ物語』(翔泳社)、『HTML入門第2版』『Java言語入門』(以上ピアソンエデュケーション)、『戦争の世界史大図鑑』(河出書房新社)、『ゲームストーミング』『iPhoneアプリ設計の極意』『リファクタリング・ウェットウェア』『ハイパフォーマンスWebサイト』(以上オライリー・ジャパン)など多数。

武舎るみ (むしゃ・るみ)
学習院大学文学部英米文学科卒。現在、マーリンアームズ株式会社取締役、翻訳家。ノンフィクション、フィクション、図鑑等の翻訳を手がけるほか、DHC-オンライン講座の運営に携わっている。
訳書は『野に雁の飛ぶとき』『神話がわたしたちに語ること』(以上角川書店)、『薔薇色の十字架刑 -- プレクサス』(水声社)、『海洋大図鑑』(ネコ・パブリッシング)、『いまがわかる! 世界なるほど大百科』(河出書房新社)など多数。

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