弊社がDHC-オンライン講座やリーディング・プラスの修了生の皆さんと一緒に翻訳した子供向けの図鑑『いまがわかる! 世界なるほど大百科』が10月下旬に発売となりました。今回、第3の訳者としてお名前が掲載されているのは、DHC-オンライン講座を修了後、5年間研鑽を積んでこられた優秀な方です。
この本は、地球の構造や宇宙での位置、生物の進化、食物連鎖、世界の政治、人口、産業、宗教、お祭り、食べ物、青少年の暮らし、銀行のしくみ、オンライン犯罪、国際電話網、未来の世界などなど、千差万別のトピックが、ひとつひとつカラーの見開きで図解されている楽しくて面白い図鑑です。「これを読めば君も物知り博士、クイズ番組で優勝できる!」的な本なのです。
図鑑はすでに何冊か訳した経験がありましたが、子供向けのものは初めてでしたので、その点で独特の新鮮な体験もありました。編集者の方からは最初に「噛んで含めるような口調で訳してください」という指示がありましたので、小学生だったときの息子やその友達を思い出しながら、話しかけるような気持ちで作業を進めました。
そこで私たちが格闘しなければならなかった相手が「字数」。翻訳はもともと原文より字数が多くなりがちなのですが、「噛んで含めるような」柔らかい口調にすると字数がますます増えてしまうのです。それでいて、図鑑ですから字数には自ずと制限があります。
そもそも原書はかなり字が小さくて、「こんなに小さな字の本を子供に読ませたら目によくないかも」という第一印象があり、編集者の方も、「さすがに字はもう少し大きくしましょう」とおっしゃっていましたので、字数制限はさらに厳しいものになりました。
専門用語をどうするかという問題もあります。自然科学、政治、産業、文化など非常に広い分野を対象にしており専門用語もかなり出てくるので、それをどの程度残し、どの程度噛み砕いて説明するか、という課題です。噛み砕けば字数は当然さらに多くなってしまいます!
そこでどうしたか? 答えは……「秘策やコツなど全然なし」。ただもう頭を絞りに絞り、ケースバイケースで表現を工夫したり情報を厳選したりして、限られたスペースにぎりぎり入れ込む作業を続けていきました。コツがあるとすれば、いつものように「忍耐」と「地道な作業」です。
そうやって、なんとか脱稿。しかし校正の段階でも字数を減らす作業はついてまわりました。いやはや、吹替翻訳や字幕翻訳をやっている方々のご苦労が偲ばれる毎日でした。大変と言えば大変でしたが、普段とはまたひと味違った経験ができたように思います。苦労といっても、裏をかえせば分かりやすく自然で簡潔な表現を目指す「特訓」ができたのですから。
興味を持たれた方のために、最後にひとつ例をご紹介。ナイリクタイパンという猛毒を持つヘビのイラストの下に書かれた説明文です。下の1.が原文で、これをまず2.のように訳しました。その後、校正紙(ゲラ)の段階では、すべての漢字にルビが振られ(ここでは括弧の中に入れて表示しています)、8文字ほど短くなって、3.の訳文になりました。しかしこれでも、少しはみ出してしまっていました。それに、原文から離れて日本語だけを読んでみると、この文には問題があることがわかります。ゲラを読みながら大笑い。いくら猛毒をもっていても、ひとかみで100人は殺せません! 最終的には4.の訳文となりました。「世界最強」の部分が情報としては落ちてしまいましたが、無事スペースにおさめることができました。
1. The venom from a single bite by "most poisonous snake in the world" can kill 100 humans.
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2. この世界最強の猛毒をもつヘビがひとかみすれば、出る毒で100人を殺せる。
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3. 世界(せかい)最強(さいきょう)の猛毒(もうどく)をもつヘビ。ひとかみで100人(にん)を殺(ころ)せる。
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4. ひとかみ分(ぶん)で100人(にん)を殺(ころ)せるほどの猛毒(もうどく)をもつヘビ。