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実践・実務翻訳のコツ(第28回)−中上級へチャレンジ!

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執筆:佐藤洋一(さとう よういち)
佐藤翻訳事務所代表
東京都出身。国際基督教大学教養学部理学科卒業後、東京工業大学大学院修士課程を修了。
在学中から、論文などの翻訳を始め、翻訳会社を経て、フリーの実務翻訳者として独立。長年にわたり翻訳学校講師も勤めている。『はじめての理系英語リーディング』(アルク)や『詳解 技術英文大全』『科学技術英語論文 英借文用例辞典』(オーム社)など、著書・訳書も多数。
Q [前回の課題] 以下の英文を「である」「だ」調で翻訳してください。

Sunlight makes pleasure chemical in the body
Mice made feel-good chemical after exposure to ultraviolet light ― and missed that light when the treatments ended

The sun’s ultraviolet rays can cause more than a tan or burn. Indeed, their influence goes more than skin deep ― to the brain, a new study finds. It showed that exposure to ultraviolet (UV) light causes mice to make a feel-good chemical. And that chemical may explain why so many people feel compelled to get a tan.

The study also may help explain why people flock to beaches and coasts for relaxation, Steven Feldman told Science News. He studies public health and skin diseases at the Wake Forest University School of Medicine in Winston-Salem, N.C.


ヒント


科学記事の冒頭です。日焼けが身体に及ぼす影響に関する記事です。

今回の課題は脳が分泌する快楽物質と紫外線の関係に関する英文です。今回の英文は素直な直訳でも十分に通じる訳文になりますが、さらに一歩進んで文と文とのつながりを意識して訳すのがポイントとなります。

具体的には、文脈に応じてわずかに言葉を補ったり、逆に冗長な言葉を割愛することです。上記の英文は科学記事ですが、専門家ではない一般読者も対象となります。そのため、少しでも読みやすい表現を工夫することが大切です。また、原文のタイトルも印象的な表現ですので、原文のニュアンスを上手に伝えるように工夫するとよいでしょう。

以下、個々の英文について、訳出上のポイントを解説します。今回は文単位で解説します。

【原文】の赤字部分が訳出上のポイントで、【訳例】の赤字部分がそれに対応する箇所です。【訳出上のポイント】の太字部分が訳出上のポイントを上手に処理するためのテクニックです。


(タイトル)


【原文】

Sunlight makes pleasure chemical in the body

【訳例】

太陽光が体内に快感をもたらす

【訳出上のポイント】

最初のタイトルはmakes pleasure chemicalの日本語表現がポイントです。素直な直訳でもよいのですが、ここでは次のように表現を工夫するとよいでしょう。

【直訳例】太陽光が体内に快感の化学物質を作る

【改良訳】太陽光が体内に快感をもたらす

まず、タイトルですのでいずれも文末の句点(。)は省略しています。これは絶対というわけでなく、タイトルであっても句読点を使う表記もあるのでこれは翻訳者の裁量判断となります。タイトルが名詞句または体言止めの場合、通常は文末の句点は省略されます。

【改良訳】のポイントは、あえてchemical(化学物質)の訳語を割愛したことです。その理由は2点あります。これは上級者向けの表現の工夫となりますので、以下の解説を読む前にご自分で考えてみてもよいでしょう。

1つ目の理由は、サブタイトルにfeel-good chemical(快感物質、快楽物質)という言葉が登場することです。これは明らかにpleasure chemicalとほぼ同義です。そのため、タイトルであえて「化学物質」という言葉を使わなくても十分に通じます。

もう1つの理由は「make+(動詞が転じた)名詞」を動詞的に訳すという実務翻訳の基本テクニックを応用したことです。例えば、make copyは「コピーする、コピーを行う」という意味になります。この場合、makeはdoに近い意味で、「作成する」という意味ではありません。もし「〜のコピーを作成する」という意味であれば、make the copy of〜という形になり、目的語に相当する「〜」が必要となります。

以上の2点を応用したのが上記の【改良訳】となります。もちろん「太陽光によって体内に快感物質が生成される」のように直訳に近い形でもかまいません。

【改良訳】のように直後に登場する同義語をあえて割愛することによって、よりシャープな表現となります。こうした簡潔な表現は特にタイトルの場合に効果的です。訳文表現のテクニックとしてぜひ覚えておいてください。

(サブタイトル)


【原文】

Mice made feel-good chemical after exposure to ultraviolet light ― and missed that light when the treatments ended

【訳例】

マウスに紫外線を照射すると体内で快感物質が生成される ― 照射をやめると紫外線を恋しがる

【訳出上のポイント】

このサブタイトルを読むとなんとなくほっこりした気分になるのではないでしょうか。紫外線を浴びると、マウスも人と同じようにビーチでリラックスしているような行動を取るそうです。原文のユーモラスな感じを上手に伝える表現を工夫したいところです。

前半のポイントは態および品詞の変換です。具体的にはexposureという名詞を動詞的に訳したことです。またexposureの訳語として「(紫外線を」照射する」という対応表現を用いている点にも注目してください。これは「目的語に応じて動詞を訳し分ける」という基本テクニックの1つです。

後半のポイントはmissedの日本語表現です。ここは翻訳者の腕の見せ所です。後半のmissedは「〜をもっと欲しがる」という意味ですが、それを「〜を恋しがる」と訳すと原文のニュアンスが一層よく伝わってきます。この表現は生徒さんの訳ですが、マウスの気持ちになって考えてみたら自然に出てきた表現だそうです。


(第1パラグラフ第1文)


【原文】

The sun's ultraviolet rays can cause more than a tan or burn.

【訳例】

太陽光に含まれる紫外線の影響は、日焼けやしみの原因となるだけにとどまらない。

【訳出上のポイント】

まず、a tan or burnのtanは「小麦色の(健康的な)日焼け」、burnは「ひりひりするような(真っ黒な)日焼け」を意味します。日本語では特に両者を区別せず「日焼け」と呼んでいます。後者のburnはしばしばpigmented spotまたはspot(s)「(顔や皮膚の)しみ」を伴います。そこで【訳例】では日本語の対応表現として「日焼けやしみ」を採用しています。


(第1パラグラフ第2文)


【原文】

Indeed, their influence goes more than skin deep ― to the brain, a new study finds.

【訳例】

実際、紫外線の影響は皮膚の表面よりはるかに深く、脳にまで及んでいる。これは最近の研究によるものだ

【訳出上のポイント】

ここでは頭から訳すのがポイントです。ここでは前半と後半を2文に分けて訳しています。ダッシュ(―)で結ばれている後半部分を1文にまとめて訳すと「最近の研究によると」が文頭になります。

通常はこれでもよいのですが、上記の英文では文頭にIndeed(実際、事実、本当のところ)がありますので「最近の研究によると」と文頭でぶつかってしまいます。【訳例】のように頭から訳せば英文の語順にほぼ一致し、文としてのおさまりが良くなります。


(第1パラグラフ第3文)


【原文】

It showed that exposure to ultraviolet (UV) light causes mice to make a feel―good chemical.

【訳例】

同研究では、マウスが紫外線(UV)を浴びると、体内で快感物質が生成されることが明らかにされた。

【訳出上のポイント】

ここは今回の課題のポイントの1つです。上記の【原文】と【訳例】をじっくり突き合わせてみてください。

まず、前半のthat exposure to ultraviolet (UV) lightの部分は「マウスが紫外線(UV)を浴びると」のように「マウスが」を補って訳しています。これは後半に登場するmiceをここで訳出したものです。

一方、後半では「体内で」という言葉を補っています。これはタイトルに登場したin the bodyを意識したものです。これはmiceを意訳したものとも言えます。


(第1パラグラフ第4文)


【原文】

And that chemical may explain why so many people feel compelled to get a tan.

【訳例】

この快感物質の存在が、これほど多くの人が肌を焼かずにはいられない理由を説明してくれる可能性がある。

【訳出上のポイント】

ここも大きなポイントの1つです。原文のthat chemicalは「その化学物質」が直訳ですが、【訳例】では「〜の存在」という言葉を補っています。これにより、直前の文とのつながりが明確になり、科学的な事実としての説得力が増します

もちろん素直な直訳でもよいのですが、ここであえて「〜の存在」という言葉を補って訳したのは、原著者がわざわざ文頭にAndを挿入した意図を読み取り、それを少しでも表現しようと工夫したものです。すなわち、この「〜の存在」という言葉は、文頭のAndの真意を汲み取って訳した表現ともいえます。


(第2パラグラフ第1文)


【原文】

The study also may help explain why people flock to beaches and coasts for relaxation, Steven Feldman told Science News.

【訳例】

本誌の取材に対して「この研究は人々が砂浜などの海岸に息抜きに集まってくる理由の解明に役立つもしれない」とスティ−ブン・フェルドマンは語った

【訳出上のポイント】

まず、Science Newsはネット上の科学雑誌の名称です(現在はScience News for Studentsとなっています)。前回の課題でも解説しましたが、Science Newsは「本誌、本誌の記者、本誌の取材」のように訳すことをお勧めします。

また、Steve Feldmanは教授の肩書を持っていますが、今回は敬称も肩書きもなしでカタカナ表記で統一しました。こうした表記は特に顧客から指示がない限り、ドキュメント単位で統一するのが基本です。今回はこの表記ルールを採用したとお考えください。

ちなみに前回の課題では「本誌(Science News)に語ったのはNicholas Lukacs氏」のように、雑誌名を「和(英)」併記、人名を英語表記、そして人名には「〜氏」という敬称を付けています。


(第2パラグラフ第2文)


【原文】

He studies public health and skin diseases at the Wake Forest University School of Medicine in Winston-Salem, N.C.

【訳例】

彼は米国のノースカロライナ州ウィンストンセーラムにあるウェイクフォレスト大学医学部(Wake Forest University School of Medicine)で公衆衛生と皮膚疾患について研究している。

【訳出上のポイント】

この文にはあまり大きなポイントはありません。しいて挙げればstudyは「研究する」という意味であり、「勉強する、学ぶ」という意味ではありません。

また、地名は日本語表記とし、大学名は「和(英)」併記の形となっています。この大学名の表記に関しても、今回のドキュメントでの表記だとお考えください。

今回は短い英文でしたが、安易に直訳で済ますことなく、意訳や対応表現をわずかに工夫することによって、さらに自然な訳文に改良することができます。

実務翻訳者にとって大切なのはつねに自分の訳文に「まだ改良の余地はないか」と自問自答することです。「もっと良い表現があるような気がする」と思う感性を大切にしてください。どんなに完璧そうに見える訳文にもまだまだ工夫の余地があるものです。

現状の自分の訳に満足せず、つねに「より良い表現」を求めていく姿勢が大切だと思います。


以下に訳例をご紹介します。

訳例

太陽光が体内に快感をもたらす

マウスに紫外線を照射すると体内で快感物質が生成される ― 照射をやめると紫外線を恋しがる

太陽光に含まれる紫外線の影響は、日焼けやしみの原因となるだけにとどまらない。実際、紫外線の影響は皮膚の表面よりはるかに深く、脳にまで及んでいる。これは最近の研究によるものだ。同研究では、マウスが紫外線(UV)を浴びると、体内で快感物質が生成されることが明らかにされた。この快感物質の存在が、これほど多くの人が肌を焼かずにはいられない理由を説明してくれる可能性がある。

本誌の取材に対して「この研究は人々が砂浜などの海岸に息抜きに集まってくる理由の解明に役立つもしれない」とスティ−ブン・フェルドマンは語った。彼は、米国のノースカロライナ州ウィンストンセーラムにあるウェイクフォレスト大学医学部(Wake Forest University School of Medicine)で公衆衛生と皮膚疾患について研究している。

以下、次回の翻訳課題です。ぜひチャレンジしてみてください。

Q [英和課題] 以下の英文を「である」「だ」調で翻訳してください。

“Do you know why people go to the beach on vacation? Why they put [Disney World] in Florida and not in Minnesota, where it’s cooler? Why caves are not more popular as a tourist destination? It’s all because of what these guys studied” in their new research, Feldman says. He did not work on the new study.

High-energy, UV rays come from the sun and the special lights used in tanning booths. Even though people know UV radiation can be dangerous, they continue to risk sunburns for a tan. Rates of skin cancer have been going up. David Fisher wanted to know why. He's an oncologist ― a doctor who treats people with cancer ― at Massachusetts General Hospital in Boston.

“We know [UV light is] dangerous,” Fisher says, but many people choose not to protect themselves.


ヒント


今回の科学記事の続きです。今回のポイントを意識して訳してみましょう。
https://student.societyforscience.org/article/sunlight-makes-pleasure-chemical-body?mode=topic&context=39

それでは、次回のこのコーナーでまたお会いしましょう!

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