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実践・実務翻訳のコツ(第27回)−中上級へチャレンジ!

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執筆:佐藤洋一(さとう よういち)
佐藤翻訳事務所代表
東京都出身。国際基督教大学教養学部理学科卒業後、東京工業大学大学院修士課程を修了。
在学中から、論文などの翻訳を始め、翻訳会社を経て、フリーの実務翻訳者として独立。長年にわたり翻訳学校講師も勤めている。『はじめての理系英語リーディング』(アルク)や『詳解 技術英文大全』『科学技術英語論文 英借文用例辞典』(オーム社)など、著書・訳書も多数。
Q [前回の課題] 以下の英文を「である」「だ」調で翻訳してください。

The catalog of all the different types of microbes in one place (be it a stomach, a pond or a garden) is called a microbiome. The study scientists “saw a profound change in the microbiome” of the guts of mice that had eaten dust from homes with dogs, Nicholas Lukacs told Science News. He worked on the study at the University of Michigan Medical School in Ann Arbor.

The idea that being overly clean can backfire on health is not new. Earlier studies have shown that children exposed to dirt and germs early in life tend to face a lower risk of asthma and allergy as they get older. Growing up with siblings and pets, for example, may strengthen a child’s immune system. This system is made of a collection of cells that defends the body against disease. But it can overreact to ordinary substances like grass or pollen, causing allergy or asthma.


ヒント


人名は英語表記で「〜氏」、大学名と地名は「和(英)」併記とします。

今回の課題は前回の英文の続きです。前回の英文の内容をふまえたうえで、今回は特に訳語選択の工夫がポイントとなります。

具体的には、辞書の訳語をそのまま適用するだけでなく、文脈に応じて意訳や対応表現を検討することです。上記の英文は科学記事ですが、専門用語ではない一般用語も多数登場しますので、そうした一般用語は通りの良い訳語をそのつど判断する必要があります。

以下、個々の英文について、訳出上のポイントを解説します。今回はパラグラフ単位で解説します。

【原文】の赤字部分が訳出上のポイントで、【訳例】の赤字部分がそれに対応する箇所です。【訳出上のポイント】の太字部分が訳出上のポイントを上手に処理するためのテクニックです。


(第1パラグラフ)


【原文】

The catalog of all the different types of microbes in one place (be it a stomach, a pond or a garden) is called a microbiome. The study scientists “saw a profound change in the microbiome” of the guts of mice that had eaten dust from homes with dogs, Nicholas Lukacs told Science News. He worked on the study at the University of Michigan Medical School in Ann Arbor.

【訳例】

ある場所(胃、池、庭など)に存在するあらゆる種類の微生物を総称して、「微生物叢(マイクロバイオーム)」という。「犬のいる家庭のほこりをマウスに食べさせると、マウスの腸内微生物叢に大きな変化が生じた」と本誌(Science News)に語ったのはNicholas Lukacs氏。彼はアナーバー(Ann Abor)にあるミシガン大学医学部で本研究に取り組んでいる

【訳出上のポイント】

第1文はcatalogの訳語選択がポイントです。「カタログ、目録」のような直訳では意味が通じません。ここは思い切って分かりやすい表現を工夫したいところです。

catalogという単語は「分類する」という動詞でも使われます。つまり、この英文のThe catalog of all the different types of microbesは「あらゆる種類の微生物として分類されるもの⇒「微生物として分類されるものの総体」と解釈できます。これを分かりやすく表現したものが訳例です。

第2文のmice that had eaten〜は「〜を食べたマウスは」が直訳となりま。このままでも大きな問題はありませんが、文脈からマウス実験であることが容易に判断できますので「〜をマウスに食べさせると」のように実験方法を述べる表現とするとよいでしょう。

また、Science Newsは雑誌名ですので「本誌、本誌の記者、本誌の取材」のような意訳を検討することもお勧めします。

第3文は、worked on the studyの定冠詞theを具体的に訳すのがポイントです。ここでは「研究に取り組んでいる」と訳している点に注目してください。

以上のように、1つ1つの訳語の工夫はわずかな違いのように見えても、こうしたきめ細かい工夫を積み重ねるによって、訳文全体の完成度が格段にレベルアップするものです。

(第2パラグラフ)


【原文】

The idea that being overly clean can backfire on health is not new. Earlier studies have shown that children exposed to dirt and germs early in life tend to face a lower risk of asthma and allergy as they get older. Growing up with siblings and pets, for example, may strengthen a child’s immune system. This system is made of a collection of cells that defends the body against disease. But it can overreact to ordinary substances like grass or pollen, causing allergy or asthma.

【訳例】

「清潔にしすぎると逆に健康に良くない」というのは古くからある考えだ。これまでの研究結果によると、幼少期に泥や細菌にさらされて育った子どもは大きくなると喘息やアレルギー反応の発症率が低くなることがわかった。つまり、兄弟やペットと一緒の環境で育ったりすると、子どもの免疫システムは強化されるのだ。この免疫システムは身体を病気から守る細胞が集まったものだ。ところが、この免疫システムは雑草や花粉などの今まで平気だった物質に対して過剰反応してしまい、アレルギー反応や喘息を引き起こしてしまうこともある。

【訳出上のポイント】

第1文の”being overly clean can backfire on health”は、古代ギリシャ時代から知られている考え方です。現代医学でも「潔癖症」は強迫神経症の一種として知られ、さまざまな疾病の原因になることが知られています。

”being overly clean can backfire on health”は格言とはいえないものの、こうした古くからよく知られている考え方はカッコ「」で囲むと読者に対して重要情報が伝わりやすくなります。

英語の原文は””で囲まれていないので、人によっては原文にない「」を追加することに抵抗があると感じるかもしれませんが、重要情報を「」で囲む訳し方は英文和訳の基本テクニックの1つです。あまり「」を多用すると訳文がうるさくなりがちですが、重要情報を強調したい場面で採用すると訳文にメリハリが出てきます。

第2文はEarlier studiesとearly in lifeの2箇所の訳語選択がポイントです。「初期の研究」や「人生の早期において」のような直訳ではどちらもやや不自然になることは分かると思います。「迷ったら直訳」が原則ですので、こうした直訳でも間違いではないのですが、中級から上級を目指す翻訳者は、ここで思い切って表現を工夫したいところです。

訳例ではEarlier studiesを「これまでの研究結果」、early in lifeを「幼少期に」と訳しています。前者は「結果」という言葉を補った意訳の一種です。後者は「(子どもが)小さい頃に」という意味ですので、科学記事の文体に合わせて「幼少期に」としています。

第3文は日本語訳に注目してください。「つまり、〜のだ」という表現を採用しています。この表現は英文には明示的に書かれていませんが、こうした「接続詞+のだ文」を補う形は直前との文の関連が深い場合に採用する日本語表現です。

一般に英語では日本語ほど接続詞が多用されず、文を順番に読んでいくことによって文同士の関係が自然に理解できるように書かれています。このような場合、英文にはない接続詞や文末の「〜のだ」を補う訳し方が英文和訳の基本テクニックとして知られています。

最後の文のordinary substancesは今回最大のポイントです。ここはまさに翻訳者の腕の見せ所といってよいと思います。もちろん、直訳でもある程度は通じるのですが、「普通の物質、ありふれた物質」のままではなんとなくしっくりきません。ここはordinaryの訳語選択を思い切って工夫したいところです。

訳例では「今まで平気だった物質」としています。これは意訳の一種ですが、文脈にふさわしい自然な訳語になっていることがわかると思います。

また、ここではgrassを「草」とせず、あえて「雑草」と訳している点に注目してください。この場合のgrassとは「芝生、草」という意味ではなく、身の回りに生えているありふれた植物を指すからです。なお、causing〜は、結果を表す分詞構文の用法で、and (therefore) it can cause 〜の意味で実務翻訳でも多用される表現です。

このように辞書の訳語をそのまま採用するのではなく、文脈に応じてあえて辞書にはない訳語を工夫することによって、状況が生き生きと読者に伝わるようになります。

慣れてくればこうした意訳は自然に頭に浮かんでくるのですが、大切なのは自分の訳語選択にわずかでも「違和感」があったらそのままにしておかないことです。

「なんとなくこの訳語はしっくりこない」とか「ほかにもっと良い表現があるような気がする」と感じるケースの大半は、まだまだ工夫の余地があるものです。現状の自分の訳に満足せず、つねに「より良い正解」を求めていく姿勢が大切だと思います


以下に訳例をご紹介します。

訳例

ある場所(胃、池、庭など)に存在するあらゆる種類の微生物を総称して、「微生物叢(マイクロバイオーム)」という。「犬のいる家庭のほこりをマウスに食べさせると、マウスの腸内微生物叢に大きな変化が生じた」と本誌(Science News)に語ったのはNicholas Lukacs氏。彼はアナーバー(Ann Abor)にあるミシガン大学医学部で本研究に取り組んでいる。

「清潔にしすぎると逆に健康に良くない」というのは古くからある考えだ。これまでの研究結果によると、幼少期に泥や細菌にさらされて育った子どもは大きくなると喘息やアレルギー反応の発症率が低くなることがわかった。つまり、兄弟やペットと一緒の環境で育ったりすると、子どもの免疫システムは強化される。この免疫システムは身体を病気から守る細胞が集まったものだ。ところが、この免疫システムは今まで平気だった雑草や花粉に対して過剰反応してしまい、アレルギー反応や喘息を引き起こしてしまうこともある。

以下、次回の翻訳課題です。今回解説したポイントを念頭に置いて、ぜひチャレンジしてみてください。

Q [英和課題] 以下の英文を「である」「だ」調で翻訳してください。

Sunlight makes pleasure chemical in the body
Mice made feel-good chemical after exposure to ultraviolet light ― and missed that light when the treatments ended

The sun’s ultraviolet rays can cause more than a tan or burn. Indeed, their influence goes more than skin deep ― to the brain, a new study finds. It showed that exposure to ultraviolet (UV) light causes mice to make a feel-good chemical. And that chemical may explain why so many people feel compelled to get a tan.

The study also may help explain why people flock to beaches and coasts for relaxation, Steven Feldman told Science News. He studies public health and skin diseases at the Wake Forest University School of Medicine in Winston-Salem, N.C.


ヒント


以下の科学記事の冒頭です。日焼けが身体に及ぼす影響に関する記事です。
https://student.societyforscience.org/article/sunlight-makes-pleasure-chemical-body?mode=topic&context=39

それでは、次回のこのコーナーでまたお会いしましょう!

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