英語翻訳の通信講座ならDHC総合教育研究所の英語翻訳/サービス

ご質問・ご相談もお受けします お電話無料 0120-118944 (月)〜(金)9:00〜17:00受付 ※祝日のぞく



実践・実務翻訳のコツ(第30回)−中上級へチャレンジ!

記事一覧へ

執筆:佐藤洋一(さとう よういち)
佐藤翻訳事務所代表
東京都出身。国際基督教大学教養学部理学科卒業後、東京工業大学大学院修士課程を修了。
在学中から、論文などの翻訳を始め、翻訳会社を経て、フリーの実務翻訳者として独立。長年にわたり翻訳学校講師も勤めている。『はじめての理系英語リーディング』(アルク)や『詳解 技術英文大全』『科学技術英語論文 英借文用例辞典』(オーム社)など、著書・訳書も多数。
Q [前回の課題] 以下の英文を「である」調で翻訳してください。

Turning on a faucet causes the water drops to form a single, smooth stream first.

This is called laminar flow.

Continuing to slowly turn on the faucet makes the stream twist.

This is called turbulent flow.

In still air, the smoke rising from a lighted cigarette produces a continuous straight stream of laminar flow.

As the stream rises, it begins to move in a zigzag way, eventually turning into turbulent flow.

(図は省略)


今回の課題は「乱流」(turbulent flow)と「層流」(laminar flow)の違いについて述べた英文です。今回の重要ポイントは「訳語の選択」です。また、図を参考にしながら内容をしっかり理解したうえで訳す必要があります。6個のセンテンスは独立した文のようなレイアウトになっていますが、それぞれの文のつながりや関連性を意識することも大切です。

以下、個々の英文について、訳出上のポイントを解説します。文単位で解説します。

【原文】の赤字部分が訳出上のポイントで、【訳例】の赤字部分がそれに対応する箇所です。【訳出上のポイント】の太字部分が訳出上のポイントを上手に処理するためのテクニックです。


(第1文)


【原文】

Turning on a faucet causes the water drops to form a single, smooth stream first.

【訳例】

蛇口をひねると、滴る水が1本のなめらかな流れを最初に形成する。

【訳出上のポイント】

第1文のポイントは日本語の訳語選択です。特に重要なのはwater dropsの訳し方です。ここでは、以下の図を参考に訳します。


まず、faucetは水道などの「蛇口」(〇)のことですが、まれに水道以外の蛇口を指すこともあります。今回は図が添えてありますので語弊はありませんが、何の蛇口かを明確に伝えたい場合はfaucetを「水道の蛇口」(〇)と訳すとよいでしょう。ただし、今回は図から水道であることは明らかですので、「蛇口」という訳語を採用しています。わざわざ「水道の」を補うのは冗長表現の一種となるからです。

また、Turning on a faucet(蛇口をひねる)というのは英語における定型表現の一種ですが、類似表現としてOpen a/the faucetやTurn a/the faucetもあります。これらの使い方はネイティブでも混乱気味で、さまざまな議論があるようです。以下に参考サイトをご紹介します。

https://forum.wordreference.com/threads/turn-on-a-faucet.316479/

第1文の最大のポイントはwater dropsの訳し方です。通常、water dropは「水滴」と訳しますが、上図を見ても明らかなように「水滴」(×)ではありません。球状になった「水滴」はa drop of waterですが、water dropsは別のものです。

ここでは図から判断して、water dropsを「水滴の集まり、しずく、滴る水」(〇)のように訳すのが正解となります。また、これらの3つの訳語の中では、最も図のイメージに最も近いのが「滴る水」(◎)と思われます。

ここでのもう1つの重要なポイントは、無生物主語の訳し方です。Turning on a faucetは条件的ニュアンスを表し、「蛇口をひねると」と訳します。条件的ニュアンスの訳出テクニックについては、DHC通信講座「実務翻訳ベーシックコース」で詳述していますので、ご興味のある方は資料請求してご確認ください。

後半はstreamの訳語選択がポイントです。ここも図を見て分かるように「水の流れ」を指していますが、すでにwater dropsを「滴る水」と訳していますので単に「流れ」(〇)と訳すのが正解です。もちろん「「水の流れ」」(〇)と訳しても間違いではありませんが、先ほどのfaucetと同様に、「水の」は冗長表現の一種です。省いても語弊がないようでしたら省略したほうがよいでしょう。

なお、causes the water drops to form a single〜の部分は、「水が滴り落ちて一筋の〜を形成する」と訳すこともできます。

(第2文)


【原文】

This is called laminar flow.

【訳例】

これは層流と呼ばれるものである。

【訳出上のポイント】

第2文のポイントは日本語の構成力です。中学生でも訳せそうな簡単な英文ですが、こういう英文を訳すときは注意が必要です。なぜなら簡単な英文ほど多数の日本語表現のバリエーションが存在するからです。以下の試訳を見てください。

(1) これは層流と呼ばれる。
(2) これが層流と呼ばれる。
(3) これを層流と呼ぶ。
(4) これがいわゆる層流である。
(5) これは層流と呼ばれるものである。
(6) これが層流と呼ばれるものである。

いかがでしょうか。似たように見える文でも、日本語の言葉使いが異なれば意味も異なるのです。ここでは、それぞれの文意の違いをしっかり区別し、最適と思われる日本語表現を選択する必要があります。

(1)は最も素直な直訳です。(2)との違いは「は」と「が」の助詞の違いだけです。「は」と「が」の使い分けについては、以下のように区別するとよいでしょう。

「AはBである」⇒「Aはなんですか?」という問いに対する答え。
「AがBである」⇒「何がBですか?」という問いに対する答え。

これを上記の(1)(2)に適用すると次のようになります。

(1) これは層流と呼ばれる。⇒「これはなんと呼ばれますか?」に対する答え。
(2) これが層流と呼ばれる。⇒「何が層流と呼ばれるのですか?」に対する答え。

(3)は「呼び名」を定義する形です。「本書では以後〜と呼ぶ」(hereinafter called〜)に近い表現です。

(4)はwhat we callやwhat is calledのような「いわゆる」という表現を利用したものです。これはこれで簡潔な表現となります。

(5)と(6)の「〜ものである」は何かを説明するときの表現です。以下の例を見てください。

(5) これは層流と呼ばれるものである。
⇒「これはなんと呼ばれるものですか?」に対する答え。
(6) これが層流と呼ばれるものである。
⇒「層流と呼ばれるものは何ですか?」に対する答え。

問題は上記(1)〜(6)のどれが最適な表現であるかの判断です。単独の文では判断しにくいのですが、ここでは直前の文とのつながり、および図の説明を考慮します。結論としては、(1)か(5)が妥当と考えられます。ただしこの場合、どちらかが絶対的な正解というわけではありませんので、迷ったら少しでも情報量の多い表現を採用します。つまり(5)となります。

ここで誤解のないように言っておきますが、(1)と(5)のみが正解で、残りの日本語表現が間違いというわけではありません。上記(1)-(6)はすべて正解の可能性があります。

ここで大事なことは、上記(1)-(6)の可能性をすべて検討したかどうかです。その結果、自分で「こうだ」と思った表現を採用することをお勧めします。万一、顧客から問い合わせが来ても、その根拠をきちんと説明できればよいのです。

(第3文)


【原文】

Continuing to slowly turn on the faucet makes the stream twist.

【訳例】

そのまま蛇口をゆっくりひねっていくと、その流れが次第にねじれ始める

【訳出上のポイント】

ここは今回の最大のポイントです。上記の【原文】と【訳例】をじっくり突き合わせてみてください。すでにお分かりと思いますがContinuing to〜の日本語表現が訳出上の最重要ポイントです。

上記のような訳文を作成するコツは、図をしっかり理解して訳すことです。以下の図を見てください。


この図を見れば、水道の蛇口を開いていくにつれて、だんだんと水のねじれが大きくなる様子がリアルにイメージできます。こうしたイメージに基づくと、以下のような別訳も可能でしょう。

【別訳例1】蛇口をゆっくりひねり続けると、その流れがだんだんとねじれ始める
【別訳例2】さらに蛇口をゆっくりひねると、その流れがどんどんねじれてくる。
【別訳例3】蛇口をゆっくりひねるにつれて、その流れにねじれが生じるようになる

赤字の部分はいずれもContinuing to〜の日本語表現を工夫したものです。こういう表現は「翻訳者の腕の見せ所」です。上記以外にもさまざまな表現のべリエーションがありますので思い切って工夫してみましょう。

なお、文の後半「その流れが次第にねじれ始める」は、「水は次第にらせん状に流れ始める」や「水はなわをよるように流れ始める」のように訳してもよいでしょう。

(第4文)


【原文】

This is called turbulent flow.

【訳例】

これは乱流と呼ばれるものである。

【訳出上のポイント】

原文では、第1文と第2文、第3文と第4文が関連性の強い文のまとまりとなっています。そこで、第2文と同様に、第4文も6通りの日本語表現のバリエーションを検討する必要があります。

第3文との自然なつながりを考慮したうえで、特に問題がなければ、第2文と日本語表現を統一するとよいでしょう。

なお、実際の翻訳では、第1文と第2文、第3文と第4文という2つのまとまりを同時に検討すると最適な日本語表現の選択が容易になります。1文より2文、2文より4文をまとめて見たほうが、判断材料が増えるからです。

(第5文)


【原文】

In still air, the smoke rising from a lighted cigarette produces a continuous straight stream of laminar flow.

【訳例】

静止大気中では、火のついたタバコからまっすぐ立ち上る煙の流れは層流である。

【訳出上のポイント】

まず、still airは専門用語で「静止大気、静止空気」(〇)と訳します。専門用語の訳語が存在する場合はそのまま利用するのが原則です。特に理由がない限り、「静止した大気、空気の動きがない、空気が動いていない環境」(△)などの意訳は避けたほうが無難です。

ここでの最大のポイントは a continuous straight streamの日本語表現です。ここでも図をしっかり参照することが大切です。以下を見てください。


この図に基づき、a continuous straight streamの部分を日本語訳では「まっすぐ立ち上る煙の流れ」(〇)と訳しています。ここでは語順の工夫にも注目しながら、上記の【原文】と【訳例】をじっくり研究してみてください。

(第6文)


【原文】

As the stream rises, it begins to move in a zigzag way, eventually turning into turbulent flow.

【訳例】

が上昇するにつれて、しだいに揺らぎ始め、最終的には乱流となる。

【訳出上のポイント】

この文も図を見れば一目瞭然です。煙が上昇するにつれて、ゆらゆらと動き始め、ついには乱流となる様子が描かれています。ここでのポイントはthe streamの訳語選択です。これは直前の文でa continuous straight streamの部分を「立ち上る煙の流れ」と訳していることを考慮した意訳の一種です。

第5文と第6文は関連性の強い文ですので、the streamの訳語は第5文の訳し方によって異なります。ここでは直前の「煙」という日本語訳を採用しています。

今回の課題はいかがだったでしょうか。短い英文でしたが、たくさんのポイントがありました。多くの人にとって第2文や第4文は難しそうには見えないと思います。ところが一見易しそうな英文ほど意外と大きなポイントがあるものです。これは非常に大事な点ですので、今後の課題でも再三強調したいと思います。

なお、今回の英文は機密保持の関係上、あまり詳しくは言えないのですが、原書は軍事関係の技術資料です。ミサイルや弾丸などが空中を飛んでいく際の流体力学を分かりやすく軍人に説明するための資料です。課題の部分だけを見ると、単なる読み物のように見えますが、このあとにはさまざまな兵器の仕組みが解説されています。

以下に訳例をご紹介します。

訳例

蛇口をひねると、滴る水が1本のなめらかな流れを最初に形成する。

これは層流と呼ばれるものである。

そのままゆっくり蛇口を開いていくと、その流れが次第にねじれ始める。

これは乱流と呼ばれるものである。

静止大気中では、火のついたタバコからまっすぐ立ち上る煙の流れは層流である。

煙が上昇するにつれて、次第に揺らぎ始め、最終的には乱流となる。

以下、次回の翻訳課題です。短い文ですのでぜひチャレンジしてみてください。

Q [英和課題] 以下の英文を「ですます」調で翻訳してください。

Investment Objective

The company seeks to achieve a rate of return in the range of forty to fifty percent (40%-50%) per month through one-day or short-term investments.

Investment Strategy

To achieve the above investment objective, the company shall identify investment opportunities in Nikkei 225 Futures, and our professional staff shall exercise their expertise and experience to realize capital gains.

ヒント


投資運用会社の業務案内の冒頭部分からの抜粋です。「ですます」調で平易で読み易い訳文にまとめてください。以下の用語を参考にしてください。

investment(投資)、 a rate of return(収益率)、 investment opportunity(投資機会)、 Nikkei 225 Futures(日経平均先物)、 capital gains(キャピタルゲイン)

それでは、次回のこのコーナーでまたお会いしましょう!

【佐藤先生が監修した講座の詳細はこちら!】
◆実務翻訳ベーシックコース⇐ 5月31日(木)までお得なキャンペーン実施中!
◆英日マルチジャンル翻訳コース
◆日英実務翻訳コース⇐ 5月31日(木)までお得なキャンペーン実施中!


  • 講座一覧へ DHCの講座をすべてご覧になれます。
  • おすすめ講座 比較表 レベル/学習時間/講座内容などを一覧で比較できます
  • 初めての方へ DHC総合教育研究所とは
  • 翻訳家をめざす方、必見。DHC通信講座の『プロ翻訳家・推薦制度』《これまでに150名以上がデビュー!》詳しくはこちら
  • 資料請求された方、全員にお届け!『翻訳家までの道のり』『翻訳のイロハ 早わかり読本』
  • 医学・薬学翻訳にご興味のある方へ
  • 割引後の受講料はこちらでチェック!DHC通信講座 受講料一覧表 ※PDFファイルが開きます
受講生の声
講座を修了した方から届いたハガキです。
修了生インタビュー
講座を修了した方に、感想を聞きました!
翻訳家デビューインタビュー
DHCからプロ翻訳家デビューした方に聞きました!
書籍
修了生が参加した書籍や語学書をご紹介。
Mail Magazine
翻訳や、英会話に役立つ無料メルマガです。
  • お問い合わせ(info@edu.dhc.co.jp)