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実践・実務翻訳のコツ(第10回)−中上級へチャレンジ!

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執筆:佐藤洋一(さとう よういち)
佐藤翻訳事務所代表
東京都出身。国際基督教大学教養学部理学科卒業後、東京工業大学大学院修士課程を修了。
在学中から、論文などの翻訳を始め、フェロー・アカデミーで学んだ後、(株)日本テックを経て、フリーの実務翻訳者として独立。翻訳学校講師も勤めている。『はじめての理系英語リーディング』(アルク)や『詳細 技術英文大全』(オーム社)など、著書・訳書も多数。
Q[前回の課題] 以下の英文を「である」「だ」調で翻訳してください。
Making Electronic Ink

A bottle of electronic ink looks just like regular ink. Electronic ink can be applied to the same materials that regular ink can be printed on.

In the case of a digital book, the pages would be made out of some kind of ultra-thin plastic. The ink would cover the entire page, separated by cells that resemble the cells on graph paper. Think of these cells as pixels on your computer screen, with each cell wired to microelectronics embedded in this plastic sheet. The microelectronics would then be used to apply a positive or negative charge to the microcapsules to create the desired text or images.

ヒント


「電子インク」に関する以下の英文記事の抜粋です。図版内の訳は不要です。
http://electronics.howstuffworks.com/e-ink1.htm

今回も科学記事からの抜粋です。訳出上のポイントがどこにあるか見抜けたでしょうか。

今回の最大のポイントは、タイトルの訳と第1パラグラフの第2文です。特に、第2文を自然な日本語表現にまとめることが出来ればプロレベルといえます。

いずれの箇所も、真意をしっかり汲み取り、過不足のない日本語表現で訳出する必要があります。

まず、タイトルの訳は「本文を読んで判断する」が基本です。ただし、「迷ったら直訳」が原則です。ですから、直訳である「電子インクを作る」を暫定訳としておいて、確信があるときには意訳も検討するとよいでしょう。

また、「作る」(make)と同義の「開発する、製造する、生産する」などの訳語の可能性も、本文に合わせて判断します。さらに、それらを品詞転換した「仕組み、原理、動作、動作原理」などの訳語も検討します。

今回のタイトルの訳では、もう1つ大切なポイントがあります。〜ing形で始まる見出しの訳し方です。

「〜する」という直訳以外にも、名詞として訳したり、「〜する方法」(how to〜と同義)と訳したりすることがあります。これらを総合的に判断します。

もともとmakingに「仕組み、原理、動作、動作原理」という意味はありませんが、「製造」(make)するためには、その原理が必要であるのは明らかです。したがって、ここでは2つを正解としたいと思います。

タイトルの訳例


電子インクの作り方
電子インクの原理

前者のほうが直訳に近い形です。後者はやや意訳です。いずれも本文の内容に合わせた訳例です。単に「作る、開発する、製造する」とするよりも、「作り方」とすると原理を示唆する感じがでます。たとえば、単に「製造」とすると、その背後にある原理や仕組みのニュアンスが薄れます。

以上のように、このタイトルは、いくつかの基本テクニックを組み合わせて判断するとよいでしょう。

次に第1パラグラフの第2文を検討しましょう。ここでのポイントはapplyとthe sameの組み合わせから真意を汲み取ることです。

まずは素直に直訳してみましょう。

直訳例


電子インクは、普通のインクで印刷できるのと同じ素材に適用できる。

この訳でもかなり原文の意味は伝えていますが、やはり日本語として不自然で、かなり改良の余地がありそうです。

ここではapplyを「適用できる」とし、the sameを「同じ」と訳していますが、それぞれの単語の意味を具体的にイメージするのが大切です。

第一文の意味は「ビンに入った電子インク…見た目は普通のインクとまったく変わらない。」ですから、それに続くこの第二文の重要情報をきちんと読み取ったうえで、具体的な言葉に置き換えて分かりやすい日本語表現に改良したいところです。

以上を考慮して、訳文をリライトしたものが次の訳文です。

【第2文の改良訳】


電子インクは、普通のインクで印刷できる素材であれば、どこにでも印刷することができる。

改良点を赤字で強調してみました。

この改良点のポイントは、applyを「印刷できる」と具体的に訳し、さらにthe same≒all(どんなものでも)またはany(どこでも)というニュアンスを読み取って訳したことです。

インクはもともと印刷するものですから、apply(適用する、応用する)よりも「印刷する」のほうが読み手にとって具体的にイメージしやすいのは明らかです。そのため、前半と後半であえて「印刷する」という言葉を繰り返しています。

このように、基本動詞は「何を目的語としているか」によって日本語の意味が変化します。そのため、機械的に逐語訳にするのではなく、文脈や前後関係をしっかり読んでそのつど訳し分ける必要があります。

やや高度な判断が必要になりますが、the same≒all(どんなものでも)またはany(どこでも)というニュアンスを読み取ることも、翻訳者による文脈判断です。

この「基本用語を訳し分ける」というテクニックは、実務翻訳のあらゆる場面で多用される基本中の基本のテクニックですので、ぜひマスターしてください。

訳例


電子インクの作り方

ビンに入った電子インク…見た目は普通のインクとまったく変わらない。電子インクは、普通のインクで印刷できる素材であれば、どこにでも印刷することができる。

電子ブックの場合、印刷面となるページは、超薄型のプラスチックの一種で作ることもできるだろう。電子インクはページ全体に埋め込まれ、ページは方眼紙のように小さなセルに分割されている。これらのセルはコンピュータ画面の画素に相当するものである。それぞれのセルは、このプラスチックシートに組み込まれたマイクロ電子デバイスに接続されている。このマイクロ電子デバイスを用いて、セルに埋め込まれたマイクロカプセルに正または負の電荷をかけることにより、思い通りの文章や画像を表示することができる。

ちなみに電子インクに関する印刷技術は日本が世界最高水準です。その応用範囲は無限ともいえます。

たとえば、半導体のプリント基板に印刷するパターン、コンピュータ画面、衣料品や日用品、その他の精密機器、さらには人体の皮膚や髪の毛の色を変えることすら可能です。

今後こうした技術がさまざまな製品に応用されると、まったく新しい市場が創出される可能性があります。

科学技術世界は想像を超えるスピードで進化していますので、実務翻訳者はそうした先端技術に触れる機会が一般の人よりも多くあります。それもまた実務翻訳の醍醐味といえるでしょう。

以下、次回の翻訳課題です。

Q [英和課題] 以下の英文を「である」「だ」調で翻訳してください。

Europe’s oldest stone hand axes emerge in Spain
Findings suggest that tool advance occurred by 900,000 years ago, much earlier than previously thought

A new analysis finds that human ancestors living in what is now Spain fashioned double-edged stone cutting tools as early as 900,000 years ago, almost twice as long ago as previous estimates for this technological achievement in Europe.

ヒント


hand axes「握斧」、tool「道具」、Findings「調査結果」、human ancestors「人類の祖先」、fashioned「作っていた」、double-edged stone cutting tools「両刃の付いた石製の切削器」

科学ニュース記事の抜粋です。太字が記事の見出し、通常の書体が記事本文です。

ポイントをしっかり見抜いて訳してください。

それでは、次回のこのコーナーでまたお会いしましょう!


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