英語翻訳の通信講座ならDHC総合教育研究所の英語翻訳/サービス

ご質問・ご相談もお受けします お電話無料 0120-118944 (月)〜(金)9:00〜17:00受付 ※祝日のぞく



実践・実務翻訳のコツ(第20回)−中上級へチャレンジ!

記事一覧へ

執筆:佐藤洋一(さとう よういち)
佐藤翻訳事務所代表
東京都出身。国際基督教大学教養学部理学科卒業後、東京工業大学大学院修士課程を修了。
在学中から、論文などの翻訳を始め、翻訳会社を経て、フリーの実務翻訳者として独立。長年にわたり翻訳学校講師も勤めている。『はじめての理系英語リーディング』(アルク)や『詳解 技術英文大全』『科学技術英語論文 英借文用例辞典』(オーム社)など、著書・訳書も多数。
Q [前回の課題] 以下の英文を「である」「だ」調で翻訳してください。

Their research, conducted at the Berenson-Allen Center for Noninvasive Brain Stimulation at the Harvard Medical School, will be published in the Journal of Neuroscience on January 25.

In a healthy, young person, a brain region called the middle temporal visual area, or MT, actively suppresses often irrelevant background motion so that he or she can concentrate on the more important motions of smaller objects in the foreground.

Previous studies have found that elderly people, as well as those with psychological conditions such as schizophrenia and depression, are better at perceiving motion in the background.


ヒント


前回の科学記事の続きからの抜粋。大学名、人名等は英語のままで表記すること。

今回の英文和訳のポイントは、前回に引き続き原文の情報を正しく読み取り、重要情報を読み手に正しく伝えるように日本語表現を工夫することです。

以下、個々の英文について、訳出上のポイントを解説します。

【原文】の赤字部分が訳出上のポイントで、【訳例】の赤字部分がそれに対応する箇所です。【訳出上のポイント】の太字部分が訳出上のポイントを上手に処理するためのテクニックです。

(第1文)


【原文】

Their research, conducted at the Berenson-Allen Center for Noninvasive Brain Stimulation at the Harvard Medical School, will be published in the Journal of Neuroscience on January 25.


【訳例】

Harvard Medical School(ハーバード・メディカル・スクール)Berenson-Allen Center for Noninvasive Brain Stimulation(ベレンソン・アレン非侵襲脳刺激専門センター)で行われた彼らの研究は、1月25日、『The Journal of Neuroscience』で発表される。


【訳出上のポイント】

ここは3箇所の固有名称の適切な処理がポイントです。例えば、Harvard Medical Schoolの日本語訳としては、「ハーバード・メディカル・スクール」「ハーバード大学医学部」「ハーバード大学医学校」などがあります。どれに統一するかは、クライアント(発注者)の判断や好みによります。少しでも迷ったら、英語表記にするか、英日表記(または日英表記)にしておくのが無難です。

Berenson-Allen Center for Noninvasive Brain Stimulationは定訳がないので、暫定訳として( )内に併記するとよいでしょう。

the Journal of Neuroscienceは、米国神経科学学会誌であり、正式名称は『The Journal of Neuroscience』です。学会誌はそのまま英語表記でも日本で通用することが多いので、ここでは正式名称にしています。

(第2文)


【原文】

In a healthy, young person, a brain region called the middle temporal visual area, or MT, actively suppresses often irrelevant background motion so that he or she can concentrate on the more important motions of smaller objects in the foreground.

【訳例】

健康な若い人の場合、中側頭部の視覚野(MT)と呼ばれる脳の一部位が、あまり重要ではない背景の動きを比較的高い頻度で意図的に無視しているため、前景にある比較的小さい物体の、より重要度の高い動きに集中できるようになっている。


【訳出上のポイント】

まず、〜so that…を用いたかなり長い文なので、「〜であるため、…になっている」のように頭から訳すとよいでしょう。

ここではactively suppresses oftenの日本語表現の工夫がポイントです。この部分を直訳すると「〜をしばしば積極的に抑制している」となります。このままでは、「背景の動きをしばしば積極的に抑制している」となり、あたかも「動きを抑制している(=物理的な動きを止めている)」かのような誤解を読者に与えてしまいます。


この部分の真意は、周囲の物体を認識するうえで、あまり重要度の高くない「背景」については、脳内での情報処理が抑制されていることを意味します。


なお、英語のoftenは「しばしば」と訳されていますが、具体的な頻度としては「60%前後またはそれ以上」といわれています。日本語のこなれをよくするために、上記の訳例では、それを「比較的高い頻度で」と意訳しています。

(第3文)


【原文】
Previous studies have found that elderly people, as well as those with psychological conditions such as schizophrenia and depression, are better at perceiving motion in the background.

【訳例】
従来の研究によると、高齢者は、統合失調症やうつ病などの精神疾患患者と同様に、背景の動きに対してより敏感であることがすでに明らかになっている。

【訳出上のポイント】

ここが今回の最大のポイントであり、翻訳者の腕の見せ所といえます。具体的には、those with psychological conditionsとbetter at perceiving motion in the backgroundの解釈および日本語表現がポイントです。

まず、those with psychological conditionsのthoseはpeopleのことですが、内容から判断して、ここでは具体的に「患者」と訳すとよいでしょう。

また、conditionsは一般用語と専門用語の訳し分けがポイントです。ここでは、「条件、状況」という一般用語の意味ではなく、「病気、疾患」と訳すのが正解です。これは医学関係の基本用語ですので覚えておいてください。

better at perceiving motion in the backgroundは、better at perceiving の解釈がポイントです。これは、be good at〜(〜が得意である)の類似表現で、「背景の動きを知覚するのがより得意である」という意味ですが、「背景の動きに対してより敏感である」のように日本語表現を工夫すると原文の真意がより正確に伝わりやすくなります。

訳例


Harvard Medical School(ハーバード・メディカル・スクール)のBerenson-Allen Center for Noninvasive Brain Stimulation(ベレンソン・アレン非侵襲脳刺激専門センター)で行われた彼らの研究は、1月25日、『The Journal of Neuroscience』で発表される。

健康な若い人の場合、中側頭部の視覚野(MT)と呼ばれる脳の一部位が、あまり重要ではない背景の動きを比較的高い頻度で意図的に無視しているため、前景にある比較的小さい物体の、より重要度の高い動きに集中できるようになっている。

従来の研究によると、高齢者は、統合失調症やうつ病などの精神疾患患者と同様に、背景の動きに対してより敏感であることがすでに明らかになっている。

ここで、もう一度最後の文の重要情報を整理してみましょう。以下のようになります。


「高齢者は背景の動きにより敏感である」

⇒逆に言えば、前景の重要度の高い物体の動きに対しては鈍感である

⇒高齢になると、周囲で動くものが見えづらくなるという事実が知られている

⇒以上が「歳を取るにつれて機敏な運転できなくなる理由」である。

ここで、前回の課題のタイトルを思い出してください。

Why Older People Are Less Astute Drivers and How the Answer Could Help Us Understand Depression

歳を取るにつれて機敏な運転できなくなる理由―それがうつ病の理解にどのように役立つか?

また、タイトル直後の第1文には次のような記述があります。

When elderly drivers get behind the wheel, they often confront the harrowing reality that they cannot easily see other cars, pedestrians, or cyclists moving around them.

高齢者が車を運転すると、周囲で移動中の車、歩いている人、走っている自転車などが見えづらいという現実に苦しむことが多い。

つまり、最後の文は上記のタイトルおよび第1文の「答え(=理由の説明)」になっているのです。この点に気づくことが、今回最大のポイントといえます。最後の文には、こうした真意が隠れているのです。

したがって、今回の課題を訳す際のポイントは、タイトルが疑問形になっていることに注目し、文中のどこにその「問い」の答えがあるかを見つけることにあるといえます。

以下、次回の翻訳課題です。「どこがポイントだろうか?」とアタリをつけながら訳すとよいでしょう。

Q [英和課題] 以下の英文を「である」「だ」調で翻訳してください。

By precisely placing magnetic coils on the back of a subject's head, the scientists stimulated the MT with electrical signals for 15 minutes to temporarily inhibit its functioning. Then, while the MT was less active, they tested how well subjects identified motions of smaller and larger objects on a computer screen. They found that when the MT was inhibited, subjects had an easier time identifying the motion of large, background-like objects. These results indicate that an improperly functioning MT may be the cause behind better than normal perception of background motion in older adults.

ヒント


MT(=middle temporal visual area「中側頭部の視覚野」)と呼ばれる脳の部位に関する研究方法を述べた記事。

それでは、次回のこのコーナーでまたお会いしましょう!

【佐藤先生監修の『実務翻訳ベーシックコース』の内容を知りたい方はココをクリックしてください】※講座の詳細ページが表示されます


  • 講座一覧へ DHCの講座をすべてご覧になれます。
  • おすすめ講座 比較表 レベル/学習時間/講座内容などを一覧で比較できます
  • 初めての方へ DHC総合教育研究所とは
  • 翻訳家をめざす方、必見。DHC通信講座の『プロ翻訳家・推薦制度』《これまでに150名以上がデビュー!》詳しくはこちら
  • 資料請求された方、全員にお届け!『翻訳家までの道のり』『翻訳のイロハ 早わかり読本』
  • 医学・薬学翻訳にご興味のある方へ
  • 割引後の受講料はこちらでチェック!DHC通信講座 受講料一覧表 ※PDFファイルが開きます
受講生の声
講座を修了した方から届いたハガキです。
修了生インタビュー
講座を修了した方に、感想を聞きました!
翻訳家デビューインタビュー
DHCからプロ翻訳家デビューした方に聞きました!
書籍
修了生が参加した書籍や語学書をご紹介。
Mail Magazine
翻訳や、英会話に役立つ無料メルマガです。
  • お問い合わせ(info@edu.dhc.co.jp)