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実践・実務翻訳のコツ(第21回)−中上級へチャレンジ!

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執筆:佐藤洋一(さとう よういち)
佐藤翻訳事務所代表
東京都出身。国際基督教大学教養学部理学科卒業後、東京工業大学大学院修士課程を修了。
在学中から、論文などの翻訳を始め、翻訳会社を経て、フリーの実務翻訳者として独立。長年にわたり翻訳学校講師も勤めている。『はじめての理系英語リーディング』(アルク)や『詳解 技術英文大全』『科学技術英語論文 英借文用例辞典』(オーム社)など、著書・訳書も多数。
Q [前回の課題] 以下の英文を「である」「だ」調で翻訳してください。

By precisely placing magnetic coils on the back of a subject's head, the scientists stimulated the MT with electrical signals for 15 minutes to temporarily inhibit its functioning. Then, while the MT was less active, they tested how well subjects identified motions of smaller and larger objects on a computer screen. They found that when the MT was inhibited, subjects had an easier time identifying the motion of large, background-like objects. These results indicate that an improperly functioning MT may be the cause behind better than normal perception of background motion in older adults.


ヒント


MT(=middle temporal visual area「中側頭部の視覚野」)と呼ばれる脳の部位に関する研究方法を述べた記事。

今回の英文和訳のポイントは、原文の情報を正しく読み取ったうえで、逐語訳を避けて自然な日本語表現を工夫することです。
以下、個々の英文について、訳出上のポイントを解説します。

【原文】の赤字部分が訳出上のポイントで、【訳例】の赤字部分がそれに対応する箇所です。【訳出上のポイント】の太字部分が訳出上のポイントを上手に処理するためのテクニックです。

(第1文)


【原文】

By precisely placing magnetic coils on the back of a subject's head, the scientists stimulated the MT with electrical signals for 15 minutes to temporarily inhibit its functioning.


【訳例】

科学者たちは、被験者の後頭部に磁気コイルを正確に装着し、電気信号によってMT野を15分間刺激して、その機能を一時的に抑制した。


【訳出上のポイント】

ここは適切な訳語選択がポイントです。例えば、placingは直訳では「配置(する)」となりますが、前置詞onと合せて「〜に装着する」と解釈するのが自然です。
また、subjectという名詞にはさまざまな意味がありますが、ここでは実験方法について述べていますので「被験者」が正解です。
なお、文末のto temporarily inhibit its functioningは「結果」のto不定詞となっていますので、頭から訳すとよいでしょう。

(第2文)


【原文】

Then, while the MT was less active, they tested how well subjects identified motions of smaller and larger objects on a computer screen.

【訳例】

その後、MT野の活動が低下している間に、被験者がどの程度、同じコンピュータ画面に映し出された大小さまざまな対象物の動きを確認できるかをテストした。


【訳出上のポイント】

smaller and larger objectsの解釈および日本語表現の工夫がポイントです。この部分を逐語訳すると「より小さな物体とより大きな物体」ですが、このままでは何を基準として「より小さな」とか「より大きな」と言っているのが意味不明です。
また、「物体を小さくしたり大きくしたりしながら」とすると、訳文としては自然になりますが、ここではobjectsが複数形ですので、この解釈は誤りです。また、「1つの物体の大きさを変化させている」かのような誤解を読者に与えてしまいます。
この文の真意は、被験者がいろいろな大きさの物体の動きをどの程度認識できるかどうかを調べる実験について述べているものです。したがって「大小さまざまな対象物」のように訳すのが自然です

(第3文)


【原文】

They found that when the MT was inhibited, subjects had an easier time identifying the motion of large, background-like objects.

【訳例】

その結果、MTの機能が抑制されている間は、背景のような大きな対象物の動きをよりよく識別することが明らかになった
【訳出上のポイント】

直前の文の実験結果を述べている文です。まず、They found that〜(その結果、〜が明らかになった)は論文などで多用される基本構文の一種ですので、覚えておくことをお勧めします。また動詞foundは、「判明した、明らかになった、分かった」などの適切な訳語を前後関係から判断して訳し分けます
また、had an easier time identifying〜の日本語表現の工夫も翻訳者の腕の見せ所といえそうです。原文は「〜を識別するより容易な時間をもつ」のようにやや比喩的な表現になっていますが、素直な発想で「〜をよりよく識別する」とすればよいでしょう。

(第4文)


【原文】

These results indicate that an improperly functioning MT may be the cause behind better than normal perception of background motion in older adults.

【訳例】

こうした結果は、MT野の機能不全が、高齢者が通常よりも背景の動きに気をとられやすくなる原因である可能性を示唆するものだ。
【訳出上のポイント】

ここでは、「品詞の転換」テクニックを随所に利用できることを見抜くのがポイントです。具体的には、助動詞mayを「可能性」のように名詞に転換して訳したり、improperly functioning MTの語順を逆転して「MT野の機能不全」とすることです。
また、behind better than normal perception of background motionの部分は逐語訳のままでは不自然な日本語になります。ここでも品詞の転換を利用して「通常よりも背景の動きに気をとられやすくなる」のようにまとめると自然な訳語になります。
ここでbetter than normalは、perceptionに係る形容詞句であり、正式にはbetter-than-normalと書きます。また、“the cause behind〜”は、”the cause of〜”(〜の原因)と同義にとらえるとよいでしょう。

訳例


科学者たちは、被験者の後頭部に磁気コイルを正確に装着し、電気信号によってMT野を15分間刺激して、その機能を一時的に抑制した。その後、MT野の活動が低下している間に、被験者がどの程度、同じコンピュータ画面に映し出された大小さまざまな対象物の動きを確認できるかをテストした。その結果、MT野の機能が抑制されている間は、背景のような大きな対象物をよりよく識別することが明らかになった。こうした結果は、MTの機能不全が、高齢者が通常よりも背景の動きに気をとられやすくなる原因である可能性を示唆するものだ。

ここで、もう一度全文の情報を整理してみましょう。以下のような流れとなっています。


(第1文)実験方法の説明

(第2文)実験目的の説明

(第3文)実験結果の提示

(第4文)実験結果から導かれる結論

このように、それぞれの文の性格をきちんと理解したうえで訳すことが大切です。

以下、次回の翻訳課題です。2つの見出しの訳を上手に工夫してください。

Q [英和課題] 以下の英文を「である」「だ」調で翻訳してください。

Fats encourage overeating
Scientists find that fats push an “eat more” button in rats

A new study suggests why these foods are so attractive. In a recent experiment, scientists fed fats to rats to learn more about the molecules involved in overeating. The researchers wanted to know what messages fats might send to the brain and other parts of the body. By studying the cells that help pass on these messages, researchers might be able to develop new drugs that can help people lose weight.


ヒント


脂肪の多い食事に関する最新の研究成果を述べた記事。

それでは、次回のこのコーナーでまたお会いしましょう!

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