英語翻訳の通信講座ならDHC総合教育研究所の英語翻訳/サービス

ご質問・ご相談もお受けします お電話無料 0120-118944 (月)〜(金)9:00〜17:00受付 ※祝日のぞく



実践・実務翻訳のコツ(第22回)−中上級へチャレンジ!

記事一覧へ

執筆:佐藤洋一(さとう よういち)
佐藤翻訳事務所代表
東京都出身。国際基督教大学教養学部理学科卒業後、東京工業大学大学院修士課程を修了。
在学中から、論文などの翻訳を始め、翻訳会社を経て、フリーの実務翻訳者として独立。長年にわたり翻訳学校講師も勤めている。『はじめての理系英語リーディング』(アルク)や『詳解 技術英文大全』『科学技術英語論文 英借文用例辞典』(オーム社)など、著書・訳書も多数。
Q [前回の課題] 以下の英文を「である」「だ」調で翻訳してください。

Fats encourage overeating
Scientists find that fats push an “eat more” button in rats

A new study suggests why these foods are so attractive. In a recent experiment, scientists fed fats to rats to learn more about the molecules involved in overeating. The researchers wanted to know what messages fats might send to the brain and other parts of the body. By studying the cells that help pass on these messages, researchers might be able to develop new drugs that can help people lose weight.


ヒント


脂肪の多い食事に関する最新の研究成果を述べた記事。

今回の記事は、「美容・健康」にも関係する興味深い内容になっています。今回の英文和訳のポイントは、原文の情報を正しく読み取ったうえで、直訳、意訳、対応表現を使い分けて自然な日本語表現を工夫することです。また、2つの見出しの訳を簡潔にまとめるように工夫します。
以下、個々の英文について、訳出上のポイントを解説します。

【原文】の赤字部分が訳出上のポイントで、【訳例】の赤字部分がそれに対応する箇所です。【訳出上のポイント】の太字部分が訳出上のポイントを上手に処理するためのテクニックです。

(タイトル)


【原文】

Fats encourage overeating

【訳例】

脂肪が過食を助長する

【訳出上のポイント】

主語のFatsは、純粋な物質としての「脂肪」というより、食物中に含まれる「脂肪分(=さまざまな脂肪成分)」のことです。したがって、このニュアンスをきちんと訳出したほうがよいでしょう。

また、ここではあえて英語の無生物主語を生かした訳にしています。通常は「脂肪分によって過食が刺激される」のような自然な訳を工夫するのですが、タイトルとしてはやや冗長です。ここでは、無生物主語をあえてそのまま生かすことによって、タイトルらしい簡潔で力強い表現になります。

(サブタイトル)


【原文】

Scientists find that fats push an “eat more” button in rats

【訳例】

脂肪分がラットの「イート・モア(もっと食べなさい)」ボタンを押すことを科学者が発見

【訳出上のポイント】

とても面白い比喩的表現です。食欲中枢の刺激をボタンにたとえています。原文のユーモラスな感じを出すために、カタカナ語をそのまま利用してもよいでしょう。

(第1文)


【原文】

A new study suggests why these foods are so attractive.

【訳例】

最近の研究により、脂肪分の多い食品がどうして人を魅きつけるか解明されつつある。

【訳出上のポイント】

ここは代名詞theseを具体的に訳すのがポイントです。直訳では「これらの食べ物」となりますが、第1文でいきなり「これらの食べ物」と書かれていると、読者にとっては唐突な印象を受けてしまいます。

このthese foodsは、タイトルで登場したfatsを多く含んだ食品であることが明らかです。代名詞を具体的に訳すことにより、誤解を防ぐだけでなく、読者に余分な思考を強いることがなくなるというメリットがあります。

ちなみに専門的な表現として「高脂肪食(品)」という言い方もありますので、これを対応表現として採用してもよいでしょう 。

(第2文)


【原文】

In a recent experiment, scientists fed fats to rats to learn more about the molecules involved in overeating.

【訳例】

最近行われた実験では、過食にかかわる分子についてより詳しく調べるために、ネズミに脂肪分の多いエサを与えた

【訳出上のポイント】

ここでは、fed fatsの訳をまとめて「脂肪分の多いエサを与えた」という意訳で処理しています。「エサを与えた」というニュアンスがfedという動詞一語の中に含まれていると考えられるからです。

一般にマウスやラットの動物実験では、肥満を誘導するために、高脂肪食を与えるのが常套手段となっています。そこで、「高脂肪食」という専門的な対応表現を利用して「ラットに高脂肪食を与えた」という訳を採用することも可能です。

意訳と対応表現の違いは、意訳は「意味を汲み取って噛み砕いて訳す」のに対し、対応表現は「同じ場面で何というか」と考えて対応する既存の表現を見つけることです。

もちろん、「(ラットに)脂肪を与えた」のように原文に忠実な直訳にしてもよい のですが、読み易さという点では意訳や対応表現を工夫したほうが有利です。

直訳がよいか、それとも意訳や対応表現を工夫するほうがよいかは翻訳者の判断に任されますが、大切なことは直訳、意訳、対応表現の訳し方を臨機応変に使い分けることです。

また、to learn more about〜は「〜についてより多く学ぶために」と直訳にせず、「〜について詳しく調べるために」としています。learnの訳語として「学ぶ」という訳語にこだわらずに柔軟な発想で処理するとよいでしょう。 なお、次の文でresearchers(研究者)が主語になっているので、ここではscientistsをあえて訳出せず省略しています。

(第3文)


【原文】

The researchers wanted to know what messages fats might send to the brain and other parts of the body.

【訳例】

研究者たちは 、脂肪が脳や身体の各部位に送ると考えられるメッセージをとらえようとしたのだ。

【訳出上のポイント】

直前の文で紹介した実験の目的を述べている文です。ここでは、mightの処理に注目してください。この助動詞mightは、「想定される可能性」のニュアンスを表していますので、「〜と考えられる、〜と想定(仮定)される」のような対応表現があります。このような対応表現は、内容に応じてそのつど判断して訳し分けます。翻訳者の腕の見せ所といえるでしょう。

なお、訳例の文末で「〜のだ」を採用しています。これは直前の文とのつながり(=実験の目的)を強調する日本語表現となっています。

(第4文)


【原文】

By studying the cells that help pass on these messages, researchers might be able to develop new drugs that can help people lose weight.

【訳例】

これらのメッセージを伝達する細胞を研究することにより、人の減量に役立つ新薬を開発することができるかもしれない

【訳出上のポイント】

ここでは、助動詞mightをmayよりもやや弱い「未知の可能性」の助動詞とみなして処理しています。「〜できる可能性がある」と断言するよりも、「〜かもしれない」としたほうが、「未知数」というニュアンスに近いといえます。

また、that can help people lose weightの部分は逐語訳のままでは不自然な日本語になります。ここでは品詞の転換を利用して「人の減量に役立つ」とするとすっきりまとまります。

訳例


脂肪分が過食を助長する
脂肪分がラットの「イート・モア(もっと食べなさい)」ボタンを押すことを科学者が発見

最近の研究により、脂肪分の多い食品がどうして人を魅き付けるか解明されつつある。最近行われた実験では、過食にかかわる分子についてより詳しく調べるために、ネズミに脂肪分の多いエサを与えた。研究者たちは、脂肪が脳や身体の各部位に送ると考えられるメッセージをとらえようとしたのだ。これらのメッセージを伝達する細胞を研究することにより、人の減量に役立つ新薬を開発することができるかもしれない。

以下、次回の翻訳課題です。今回の記事の続きです。

Q [英和課題] 以下の英文を「である」「だ」調で翻訳してください。

In the new study, when rats tasted fats, their bodies activated molecules called endocannabinoids. In both humans and rats, these molecules help tell the brain when it’s time to eat.

Previous studies have shown that when endocannabinoids are active, an animal will eat... and eat, and eat and eat. When endocannabinoids are blocked, or inactive, the eating stops.


ヒント


endocannabinoids「内在性カンナビノイド」

それでは、次回のこのコーナーでまたお会いしましょう!

【佐藤先生が監修した講座の詳細はこちら!】
◆実務翻訳ベーシックコース
◆英日マルチジャンル翻訳コース
◆日英実務翻訳コース


  • 講座一覧へ DHCの講座をすべてご覧になれます。
  • おすすめ講座 比較表 レベル/学習時間/講座内容などを一覧で比較できます
  • 初めての方へ DHC総合教育研究所とは
  • 翻訳家をめざす方、必見。DHC通信講座の『プロ翻訳家・推薦制度』《これまでに150名以上がデビュー!》詳しくはこちら
  • 資料請求された方、全員にお届け!『翻訳家までの道のり』『翻訳のイロハ 早わかり読本』
  • 医学・薬学翻訳にご興味のある方へ
  • 割引後の受講料はこちらでチェック!DHC通信講座 受講料一覧表 ※PDFファイルが開きます
受講生の声
講座を修了した方から届いたハガキです。
修了生インタビュー
講座を修了した方に、感想を聞きました!
翻訳家デビューインタビュー
DHCからプロ翻訳家デビューした方に聞きました!
書籍
修了生が参加した書籍や語学書をご紹介。
Mail Magazine
翻訳や、英会話に役立つ無料メルマガです。
  • お問い合わせ(info@edu.dhc.co.jp)