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実践・実務翻訳のコツ(第24回)−中上級へチャレンジ!

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執筆:佐藤洋一(さとう よういち)
佐藤翻訳事務所代表
東京都出身。国際基督教大学教養学部理学科卒業後、東京工業大学大学院修士課程を修了。
在学中から、論文などの翻訳を始め、翻訳会社を経て、フリーの実務翻訳者として独立。長年にわたり翻訳学校講師も勤めている。『はじめての理系英語リーディング』(アルク)や『詳解 技術英文大全』『科学技術英語論文 英借文用例辞典』(オーム社)など、著書・訳書も多数。
Q [前回の課題] 以下の英文を「である」「だ」調で翻訳してください。

Veggies: A radiation shield
Certain crunchy veggies in the broccoli family protect rats’ healthy cells from killer radiation

Radiation can help or harm - and sometimes do both at the same time. When used as a medical treatment, radiation kills cancer cells. But any nearby healthy cells hit by the radiation also will die or suffer lasting harm.

Scientists have identified a chemical that might help with these repairs. It’s called DIM, and it develops in the body after eating a diet rich in broccoli and related vegetables, such as cauliflower, Brussels sprouts and kale.


ヒント


放射線の害から身体を守る食材を紹介した科学記事。

今回の英文和訳のポイントは、自然な日本語表現を心がけることです。

具体的には、個々の単語について逐語訳ではなく自然な訳語を工夫したり、日本語で対応する言い回しがないかどうか、柔軟な発想で日本語表現を工夫することです。
以下、個々の英文について、訳出上のポイントを解説します。

【原文】の赤字部分が訳出上のポイントで、【訳例】の赤字部分がそれに対応する箇所です。【訳出上のポイント】の太字部分が訳出上のポイントを上手に処理するためのテクニックです。


(タイトル)


【原文】

Veggies: A radiation shield

【訳例】

放射線から身を守る野菜

【訳出上のポイント】

shieldは比喩的表現です。この場合、直訳の「シールド、遮蔽物」としても原文のニュアンスは十分に伝わりません。訳例では、shieldという名詞を品詞転換して自然な訳語を工夫しています。

比喩的表現を上手に訳すコツは、「シールド⇒身を守るもの」のように柔軟な発想を心がけることです。一種の連想ゲームをするつもりで易しい表現に置き換えるとよいでしょう。


(サブタイトル)


【原文】

Certain crunchy veggies in the broccoli family protect rats’ healthy cells from killer radiation

【訳例】

ブロッコリーの仲間に属する歯ごたえのあるアブラナ科の野菜には、ラットの健康な細胞を有害放射線から守るものがある

【訳出上のポイント】

文頭のcertainは直訳にすると「特定の」ですが、この
certainはsomeと同じ用法で、「〜の中には…のものがある」という基本表現です。
また、broccoli familyの真意はおそらく「ブロッコリーなどのアブラナ科の野菜(cruciferous vegetables)」です。
ここでは原文に忠実に「ブロッコリーの仲間」としてもよいのですが、タイトルの「放射線から身を守る野菜」に続くサブタイトルなので、ここで「アブラナ科」という専門的な分類名を挙げることは読者に対する説得力を増す効果があると思われます。
こうした演出は、タイトルの訳文表現としては効果的な場合もあります。1つの表現テクニックとしてご参考にしてください。
また、killerを「人を殺す、殺人的な」とするとややおおげさなので、「有害(な)」としている点も注目してください。なお、例えば、文字通り「命取りとなる」のような訳でもよいでしょう。


(第1文)


【原文】

Radiation can help or harm - and sometimes do both at the same time.

【訳例】

放射線は毒にも薬にもなる。時には、その両方が同時に起こることもある。

【訳出上のポイント】

冒頭のRadiation can help or harmは、翻訳者の腕の見せ所です。ここは「放射線は助けになることもあれば、害になることもある」のような直訳でもよいのですが、この英文には独特のリズム感があります。また、格言のような含蓄に富んだニュアンスもあります。できればこうしたニュアンスもぜひ再現したいところです。
英語と日本語は異質な言語ですが、同じ人間が用いる言葉です。実際、驚くほど似たような格言が日英の両言語圏に存在します。
この英文のような格言調の英文は、対応する日本語の格言や慣用表現を探してみると意外とうまくいくことが多いものです。
訳例では、「放射線は毒にも薬にもなる」という表現を採用していますが、ほかにもさまざまな表現のバリエーションがあると思います。例えば、「放射線は諸刃の剣である」としてもよいでしょう。

(第2文)


【原文】

When used as a medical treatment, radiation kills cancer cells.

【訳例】

治療に用いる放射線は、ガン細胞を殺す。

【訳出上のポイント】

ここでのポイントはWhen used as a medical treatmentの処理です。意味上の主語がradiationですので、このような関係詞節の表現は意味上の主語を補って訳すと分かりやすい表現になります。
また、ここでは語順にも一工夫が必要です。「放射線を治療に用いると」とすると、後半の文とつながりがやや不自然になりますので、あえて「放射線」を主語にした文にまとめています。
ここでは、「〜はガン細胞を殺す」のような物質主語(「放射線」が主語)の構文になっています。最近の科学記事などではこうした構文も多用されます。

(第3文)


【原文】

But any nearby healthy cells hit by the radiation also will die or suffer lasting harm.

【訳例】

ところが、放射線を照射した周囲の健康な細胞も死滅したり、長期に渡ってダメージが残ってしまう

【訳出上のポイント】

suffer lasting harmは面白い表現です。ここは直訳にするといかにも英語的な堅苦しい表現になってしまうので、こなれた日本語表現を工夫するとよいでしょう。訳例では「長期に渡ってダメージが残ってしまう」としていますが、ほかにもさまざまな表現のバリエーションがあると思います。
また、前半のhit byについても、「(放射線を)照射した」のように自然な訳語を工夫している点に注目してください。

(第4文)


【原文】

Scientists have identified a chemical that might help with these repairs.

【訳例】

科学者たちは、この細胞の修復を助けると考えられる化学物質を特定した。

【訳出上のポイント】

mightは「可能性」の助動詞です。ここでは、「仮説」のニュアンスを出すためにmayではなくmightが使われています。ここもいくつか表現のバリエーションがあると思いますが、「〜と考えられる、〜する可能性がある」などが適訳となります。

(第5文)


【原文】

It’s called DIM, and it develops in the body after eating a diet rich in broccoli and related vegetables, such as cauliflower, Brussels sprouts and kale.

【訳例】

その物質はDIMと呼ばれ、ブロッコリーや、カリフラワー、芽キャベツ、ケールなどのブロッコリーの仲間の野菜を多く含む食事を摂ると、体内で生成される

【訳出上のポイント】

developは自動詞として使われています。日本語では「生成される」のように受け身として訳すと自然な訳になります。このような翻訳テクニックを「態の変換」と呼びます。
また、dietという単語も要注意です。日本語では「ダイエット」というカタカナ語が定着しているせいか、「ダイエット」というと「小食、食事を控えること、減量」などを連想しがちです。
もちろん、英語にもこれらのニュアンスはあるのですが、英語のdietという単語の本来の意味は「(日常の)食事、常食している食材、主食」という意味です。例えば、The diet of a whale is plankton.(クジラの主食はプランクトンである。)のように使います。
一般に、日本語で定着しているカタカナ語は、英語の単語とはニュアンスが異なる場合があるので、読者の誤解を招かないかどうか、そのつど検討してから採用することが大切です。

訳例

放射線から身を守る野菜
ブロッコリーの仲間に属する歯ごたえのあるアブラナ科の野菜にはラットの健康な細胞を有害放射線から守るものがある

放射線は毒にも薬にもなる。時には、その両方が同時に起こることもある。治療に用いる放射線は、ガン細胞を殺す。ところが、放射線を照射した周囲の健康な細胞も死滅したり、長期に渡ってダメージが残ってしまう。

科学者たちは、この細胞の修復を助けると考えられる化学物質を特定した。その物質はDIMと呼ばれ、ブロッコリーや、カリフラワー、芽キャベツ、ケールなどのブロッコリーの仲間の野菜を多く含む食事を摂ると、体内で生成される。

以下、次回の翻訳課題です。今回の記事の続きです。

Q [英和課題] 以下の英文を「である」「だ」調で翻訳してください。

Known as cruciferous veggies, each of these contains a healthful compound. In the stomach, that compound is converted into DIM. Scientists have now shown that DIM helps cells recover from high doses of radiation, at least in rats. The good news: Only healthy cells benefit. Radiation still kills cancer cells, even when there’s plenty of DIM around.

Earlier studies in animals have showed that DIM can kill cancer cells. Those studies suggested DIM might work on people with cancer, too.

So, if you’ve been arguing for years that being served broccoli or kale at dinner is like being asked to eat medicine, you may be right. And you can thank the cook for protecting those cells of yours.


ヒント


放射線の害から身体を守る食材を紹介した科学記事の続き。

それでは、次回のこのコーナーでまたお会いしましょう!

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