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実践・実務翻訳のコツ(第26回)−中上級へチャレンジ!

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執筆:佐藤洋一(さとう よういち)
佐藤翻訳事務所代表
東京都出身。国際基督教大学教養学部理学科卒業後、東京工業大学大学院修士課程を修了。
在学中から、論文などの翻訳を始め、翻訳会社を経て、フリーの実務翻訳者として独立。長年にわたり翻訳学校講師も勤めている。『はじめての理系英語リーディング』(アルク)や『詳解 技術英文大全』『科学技術英語論文 英借文用例辞典』(オーム社)など、著書・訳書も多数。
Q [前回の課題] 以下の英文を「である」「だ」調で翻訳してください。

Doggy dust could be a good thing
Dust from homes with a pooch appears to limit the risk of allergy ― at least in mice

Dogs are loyal protectors of a home. The dust these pets drag inside also appears protective, a new study in mice finds. It suggests babies raised alongside dogs develop fewer allergies and infections.

A mix of microbes, or germs (many of them harmless), infests house dust, the scientists note. Homes with dogs harbored dust with a broader mix of microbes than did homes with no pooch, their new data show. And that mix in homes with dogs appears to offer big health benefits, the scientists reported December 16 in the Proceedings of the National Academy of Sciences.


ヒント


ペットの犬と人の健康との関係を紹介した科学記事。タイトルの訳を工夫してください。

今回の英文和訳のポイントは、日本語の文章構成力です。今回の課題の内容は、ペットの犬と人の健康との意外な関係です。そうした内容を読者に効果的に伝えるように表現を工夫することをお勧めします。

具体的には、あまり堅苦しくならず、親しみやすいタイトルを採用することです。上記の英文は科学記事ですが、古代から続く犬とヒトの密接な関係が想像され、なんとなく微笑ましくなります。そうした雰囲気をタイトルで伝えることによって、読者の原文への興味が増し、本文への効果的な導入となります。

以下、個々の英文について、訳出上のポイントを解説します。今回はパラグラフ単位で解説します。

【原文】の赤字部分が訳出上のポイントで、【訳例】の赤字部分がそれに対応する箇所です。【訳出上のポイント】の太字部分が訳出上のポイントを上手に処理するためのテクニックです。


(タイトル)


【原文】

Doggy dust could be a good thing

【訳例】

ワンコの出すほこり身体にいいかも

【訳出上のポイント】


タイトルは本文の内容をしっかり読んでから訳すのが鉄則です。直訳では「犬の埃は良いものかもしれない」となりますが、これだと漠然としていて意味不明です。

タイトルを訳す場合、本文の内容と矛盾しない範囲で比較的自由度の高い表現が許容されます。

上記の訳例では、〜dustを「〜の出すほこり」のように動詞を補って訳している点、またa good thingを「(人の)身体によい」のように具体的に訳している点に注目してください。

なお、doggyを「ワンコ、わんちゃん」のように口語体で訳すと、親しみやすい印象が強まります。

このあたりのさじ加減は翻訳者の裁量にまかされる部分だと思いますので、好みの表現を検討してみてください。

(サブタイトル)


【原文】

Dust from homes with a pooch appears to limit the risk of allergy ― at least in mice

【訳例】

を飼っている家のほこりはアレルギーのリスクを低下させる ― マウス実験で判明

【訳出上のポイント】

最初のタイトルの文体と異なり、このサブタイトルでは情報を正確に伝える文体を採用しています。つまり、「親しみやすい口語調のタイトル⇒科学的事実を伝えるサブタイトル」という対比によって、メリハリのある表現となります。

文末のat least in miceはやや悩ましい表現です。というのは、「少なくともマウスでは」と直訳にしても間違いではないのですが、なんとなく漠然とした印象が否めません。

せっかくタイトルを思い切って口語調にしたのですから、ここはぜひともパンチの利いた表現にしたいところです。

ダッシュ(―)以下を日本語の丸カッコ(  )で囲むことも可能ですが、ここはあえて原文のダッシュ記号(―)を生かしてみました。

訳例ではat leastのニュアンスを「マウス実験」と限定することで表現し、さらに本文のappearのニュアンスを「〜で判明」という体現止めの形で利用しています。

このように1つの文の中でわずかに言葉を補ったり、語順を変更することによって、極端な意訳に偏らずに訳文を上手に仕上げることができます。

なお、Dust from homes with a poochを「犬を飼っている家のほこり」と前置詞withを具体的に訳している点にも注目してください。


(第1パラグラフ)


【原文】

Dogs are loyal protectors of a home. The dust these pets drag inside also appears protective, a new study in mice finds. It suggests babies raised alongside dogs develop fewer allergies and infections.

【訳例】

犬は家を守ってくれる忠実なペットだが、彼らが家の中に持ち込むほこりまでも人を守ってくれるらしいことが、マウスを用いた最近の研究で明らかになった。マウスを用いたこの研究結果は、犬と一緒に育てられた乳児は、アレルギーや感染症の発症率が低いことを示唆している。

【訳出上のポイント】

まず、第1文は「犬は家の忠実な守護者だ」のような直訳でも間違いではありませんが、ここはもう少し親しみやすい表現を工夫したいとことです。

そこでprotectorsを、第2文に登場する「ペット」という言葉を借用して「守ってくれるペット」すると、犬に対する親近感をさりげなく表現できます。

また、第1文と第2文は、非常に関連の強い文です。最近の英文和訳はTradosなどの翻訳メモリで再利用することを念頭に置いて「1センテンス=1訳文」の原則が適用されることが多いのですが、そうでなければ2文をつなげて訳すことも検討してみることをお勧めします。

上記の訳例では第1文と第2文をつなげて訳しています。第1文を単独で訳すよりもよりreadableな訳文になっている点に注目してください。

第2文では、The dust these pets drag insideを「彼らが家の中に持ち込むほこり」のようにinsideを具体的に「家の中」と訳しています。

また、第2文の副詞alsoは非常に重要な情報となっています。これは「家だけでなく人の身体(健康)までも守ってくれる」という二重の意味でloyal protectorであるというライターの気持ちが込められています。こういう副詞を省略する訳者もいるのですが、ここは省略せずしっかり訳したいところです。

第3文は、代名詞Itを具体的に訳すのがポイントです。ここでは第2文の言葉を引用して「マウスを用いたこの研究結果」としている点に注目してください。

このように、頭の中だけで考えた言葉を補うのではなく、前後の文で使われている単語を引用して訳文を読み易くする工夫はベテラン翻訳者が好んで使うテクニックですので、ぜひご参考にしてください。

(第2パラグラフ)


【原文】

A mix of microbes, or germs (many of them harmless), infests house dust, the scientists note. Homes with dogs harbored dust with a broader mix of microbes than did homes with no pooch, their new data show. And that mix in homes with dogs appears to offer big health benefits, the scientists reported December 16 in the Proceedings of the National Academy of Sciences.

【訳例】

研究者たちが注目しているのは、ハウスダストには様々な微生物や細菌(大半は無害)が住みついている、という点だ。犬のいる家のほこりには、飼っていない家のほこりよりも、住みついている微生物の種類が多いことをこの新しい研究データは示している。さらに、犬のいる家に見られる微生物の集団が、人の健康にきわめて良い効果をもたらすようだと、12月16日付の『米国科学アカデミー紀要』で報告されている。

【訳出上のポイント】

ここで最大のポイントは、第1文のA mix of〜(様々な〜)と第2文のa broader mix of〜(〜のほうが多い、〜の種類が多い)が対応していることに気づくことです。

そうすれば、品詞転換のテクニックを知らなくても、broaderという比較級の形容詞を自然に「〜のほうが多い」のように述語的に訳すことができます。

また、第3文のthat mixを「微生物の集団」のように具体的に訳している点にも注目してください。

先ほどの主語の代名詞Itと同様に、thatやthisなどの指示代名詞も、できるだけ具体的に訳すように心がけることをお勧めします。

以下に訳例をご紹介します。

訳例

ワンコの出すほこり、身体にいいかも
犬を飼っている家のほこりはアレルギーのリスクを低下させる ― マウス実験で判明

犬は家を守ってくれる忠実なペットだが、彼らが家の中に持ち込むほこりまでも人を守ってくれるらしいことが、マウスを用いた最近の研究で明らかになった。マウスを用いたこの研究結果は、犬と一緒に育てられた乳児は、アレルギーや感染症の発症率が低いことを示唆している。

研究者たちが注目しているのは、ハウスダストには様々な微生物や細菌(大半は無害)が住みついている、という点だ。犬のいる家のほこりには、飼っていない家のほこりよりも、住みついている微生物の種類が多いことをこの新しい研究データは示している。さらに、犬のいる家に見られる微生物の集団が、人の健康にきわめて良い効果をもたらすことが、12月16日付の『米国科学アカデミー紀要』で報告されている。

以下、次回の翻訳課題です。今回解説したポイントを念頭に置いて、ぜひチャレンジしてみてください。

Q [英和課題] 以下の英文を「である」「だ」調で翻訳してください。

The catalog of all the different types of microbes in one place (be it a stomach, a pond or a garden) is called a microbiome. The study scientists “saw a profound change in the microbiome” of the guts of mice that had eaten dust from homes with dogs, Nicholas Lukacs told Science News. He worked on the study at the University of Michigan Medical School in Ann Arbor.

The idea that being overly clean can backfire on health is not new. Earlier studies have shown that children exposed to dirt and germs early in life tend to face a lower risk of asthma and allergy as they get older. Growing up with siblings and pets, for example, may strengthen a child’s immune system. This system is made of a collection of cells that defends the body against disease. But it can overreact to ordinary substances like grass or pollen, causing allergy or asthma.


ヒント


今回の課題の続きです。人名は英語表記で「〜氏」、大学名と地名は「和(英)」併記とします。

それでは、次回のこのコーナーでまたお会いしましょう!

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