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実践・実務翻訳のコツ(第29回)−中上級へチャレンジ!

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執筆:佐藤洋一(さとう よういち)
佐藤翻訳事務所代表
東京都出身。国際基督教大学教養学部理学科卒業後、東京工業大学大学院修士課程を修了。
在学中から、論文などの翻訳を始め、翻訳会社を経て、フリーの実務翻訳者として独立。長年にわたり翻訳学校講師も勤めている。『はじめての理系英語リーディング』(アルク)や『詳解 技術英文大全』『科学技術英語論文 英借文用例辞典』(オーム社)など、著書・訳書も多数。
Q [前回の課題] 以下の英文を「である」「だ」調で翻訳してください。

“Do you know why people go to the beach on vacation? Why they put [Disney World] in Florida and not in Minnesota, where it’s cooler? Why caves are not more popular as a tourist destination? It’s all because of what these guys studied” in their new research, Feldman says. He did not work on the new study.

High-energy, UV rays come from the sun and the special lights used in tanning booths. Even though people know UV radiation can be dangerous, they continue to risk sunburns for a tan. Rates of skin cancer have been going up. David Fisher wanted to know why. He's an oncologist ― a doctor who treats people with cancer ― at Massachusetts General Hospital in Boston.

“We know [UV light is] dangerous,” Fisher says, but many people choose not to protect themselves.


今回の課題は前回の英文の続きです。脳が分泌する快楽物質と紫外線の関係に関する英文です。今回の英文は素直な直訳でも十分に通じる訳文になりますが、さらに一歩進んで文と文とのつながりを意識して訳すのがポイントとなります。

以下、個々の英文について、訳出上のポイントを解説します。今回はパラグラフ単位で解説します。

【原文】の赤字部分が訳出上のポイントで、【訳例】の赤字部分がそれに対応する箇所です。【訳出上のポイント】の太字部分が訳出上のポイントを上手に処理するためのテクニックです。


(第一パラグラフ)


【原文】

“Do you know why people go to the beach on vacation ? Why they put [Disney World] in Florida and not in Minnesota, where it's cooler? Why caves are not more popular as a tourist destination? It's all because of what these guys studied” in their new research, Feldman says. He did not work on the new study.

【訳例】

「なぜ人は休暇にビーチへ出かけるのか。なぜディズニー・ワールド(Disney World)はミネソタのように涼しい場所ではなくフロリダにあるのか。なぜ洞穴が観光名所としてあまり人気がないのか彼らの最新の研究が、それらすべての原因を明らかにしています」とフェルドマンは言う。同氏は当該の研究とは無関係な人物だ。

【訳出上のポイント】

原文は最初の3文が疑問文となっています。英語の疑問文を日本語に訳す場合、文末に疑問符(?)を付けるか、それとも句点(。)にするかどうかという問題があります。特にスタイルの指定がない場合、自分でどちらかに決めて統一するとよいでしょう。

疑問符(?)は感嘆符(!)と同様に、本来の日本語にはなかったものです。そのため、日本語訳の文末に疑問符(?)を付けず、句点(。)を好む人もいます。その一方で、第二外国語としての英語の普及に伴い、疑問符(?)は日本文でも日常的に使われるようになっています。したがって、文末を疑問符(?)にするかそれとも句点(。)にするかは自分で基準を決めて統一することをお勧めします。

1つの目安として、文中に「なぜ」があるかどうか、文末が「〜、ですか」があるかで判断するという方法があります。以下の例文を見てください。

(1) 人は休暇にビーチへ出かけるのか。
(2) 人は休暇にビーチへ出かけるのか?
(3) なぜ人は休暇にビーチへ出かけるのか。
(4) なぜ人は休暇にビーチへ出かけるのか?

(1)と(2)は単純な疑問形です。(3)と(4)は「理由」を尋ねる疑問形です。このままでは比較しにくいので、「人」を「あなた」に変え、また文末の「か」を省略してみましょう。以下の例文を見てください。

(1)-1 あなたは休暇にビーチへ出かけるの。
(2)-1 あなたは休暇にビーチへ出かけるの?
(3)-1 なぜあなたは休暇にビーチへ出かけるの。
(4)-1 なぜあなたは休暇にビーチへ出かけるの?

まず、(1)-1と(2)-1を比較してみましょう。(1)-1は口語では文末のイントネーションで判断できますが、書き言葉では疑問文なのか、軽い命令文なのかが不明確です。したがって、(1)-1は書き言葉としては好ましくありません。この場合、(2)-1のように疑問符(?)を文末に付けたほうがよいでしょう。

(3)-1と(4)-1を比較すると、文頭に「なぜ」があるため、どちらも誤解なく読み手に意味が伝わります。この場合はどちらでもよいでしょう。

【訳例】では(3)-1の形で統一しています。これは「なぜ」があるため、文末に「?」がなくても語弊はないと判断したためです。

訳出上のポイントの1つは、”Why they put [Disney World] in Florida〜”の部分です。直訳では「なぜ彼らは[Disney World]をフロリダに置くのか」となりますが、このままでは不自然です。

まず、原文の[Disney World]の正式名称は”Walt Disney World Resort”です。東京の山手線の内側の2倍の面積をもつ世界最大のアミューズメントパークです。原文の[Disney World]はその略称であり、[ ]はその強調記号です。

【訳例】では「なぜディズニー・ワールド(Disney World)はミネソタのように涼しい場所ではなくフロリダにあるのか。」と訳しています。ここではput A in Bを「AをBに置く」のような能動形ではなく「AがBにある」のように事実に基づく客観的な表現にしています。また、[Disney World]は日本での通称名(カタカナ)と英語を表記にしました。この形式は今回のドキュメントで採用したスタイルです。

第4文は最初の3つの疑問文に対する返答です。これら3つの疑問文、1つの返答文をまとめて「自問自答形式」の会話文と呼びます。ここでは最初の3つの疑問文は「である」調、最後の返答文は「です。ます」調で処理しています。

通常、1つのドキュメントでは「です・ます」調または「である・だ」調で統一するのが基本ですが、会話文に関してはその限りではありません。不自然にならないように、「です・ます」調と「である・だ」調を混在させるケースもしばしばあります。今回はそのケースに該当します。

最後の文のHe did not work on the new study.は、日本語の訳文表現がポイントです。よく見られる翻訳例としては、以下のようなものが挙げられます。

【試訳1】彼(フェルドマン)はこの新たな研究には加わらなかった。
【試訳2】彼(フェルドマン)はこの新たな研究には関与しなかった。
【試訳3】彼(フェルドマン)はこの新たな研究には参加していなかった。

結論から言えば、いずれも単独の文の訳文としては問題ありません。それぞれ上手な訳文です。ただしこのままでは、パラグラフ全体で見ると直前の文のつながりがやや不明確です。そこで、訳例では次のように表現を工夫して訳しています。

【訳例】同氏は当該の研究とは無関係な人物だ

ここで「人物」という名詞を補っている点に注目してください。これにより、Feldmanが今回の研究に対して「外部の人間」であり、中立的な立場から客観的な意見を述べているという点が読者に明確に伝わります。

さらに、Heを「同氏」と訳すことにより、直前にあるFeldmanを指すことが明らかになり、直前の文とのつながりがさらに明確になります。

なお、the new studyを「当該研究」と訳し、newのニュアンスはあえて割愛しています。このnewは直前に登場するtheir new researchのnewを受けたものですが、英語ではこのようにnewが繰り返し登場することがあります。ここで、二度目以降のnewは日本語の「新しい、最新の」という意味よりも、むしろ「今回の、このたびの」という軽い意味で使われています。こうしたニュアンスは「当該の」という日本語に対応すると判断したのが上記の訳例です。

(第2パラグラフ)


【原文】

High-energy, UV rays come from the sun and the special lights used in tanning booths. Even though people know UV radiation can be dangerous, they continue to risk sunburns for a tan. Rates of skin cancer have been going up. David Fisher wanted to know why. He's an oncologist ― a doctor who treats people with cancer ― at Massachusetts General Hospital in Boston.

【訳例】

太陽光や日焼けサロンで使用される特殊な光には、高エネルギーの紫外線が含まれている。紫外線が人体に有害だと知っていながら、人々は肌を小麦色に焼くために日焼けにいそしんでいるその結果、皮膚癌になる率は上昇している。ボストンのマサチューセッツ総合病院(Massachusetts General Hospital)でがん患者の治療に従事している腫瘍学者デイビッド・フィッシャーはその理由を解明したいと思っていた。

【訳出上のポイント】

第1文のポイントは構文解釈と日本語の構成力です。まず構文解釈に関しては、主語がUV raysで述語動詞が「由来、源」を意味するcom fromです。High-energyとUV rays(紫外線)は同格の主語です。「同格」とは「ある名詞を別の名詞で説明すること」と定義されています。また、UV rays(紫外線)の源としては「太陽光」(sun light)と「(日焼けサロンで使用される)特殊な光」の2種類です。used in tanning boothsの係り先がspecial lightsだけである点に注目してください。

なお、係り先の判断がつかないような場合は以下のように訳すこともできます。

【第1文の別訳例】

日焼けサロンで使用される特殊光や太陽光には、高エネルギーの紫外線が含まれている。

このように後ろから訳し返すことにより、係り先の判断を読み手にまかせることができます。これはプロ翻訳者がよく用いる基本テクニックです。

また、「由来、源」を意味する「(主語)come from〜」は「〜には(主語)が含まれている」のような形を採用し、自然な日本語表現を心がけています。併せてご参考にしてください。

第2文のポイントは日本語表現の工夫です。特にcan be dangerousとthey continue to riskの2か所は翻訳者の腕の見せ所といえます。ここは生徒さんに訳してもらうと非常に多彩な日本語表現が見られるところです。訳例はあくまでも唯一の正解ではなく、多くの表現の1つとしてご参考にしてください。

第3文のポイントは直前の文とのつながりを意識することです。訳例では「その結果、」という言葉を補って訳しています。通常は直訳のままでもよいのですが、2文間の関係を考慮すれば、文としてのつながりが良くなります。

(第3パラグラフ)


【原文】

We know [UV light is] dangerous,” Fisher says, but many people choose not to protect themselves..

【訳例】

「紫外線が危険だということを知っていながら、多くの人々は身を守ろうとしません」とフィッシャーは言う。

【訳出上のポイント】

ここは今回の課題の最大のポイントです。上記の【原文】と【訳例】をじっくり突き合わせてみてください。

まず、主語のWeは「人々」と訳すことが可能です。そこで後半のmany peopleと主語を統合し、「多くの人々」でWeのニュアンスを代用しています。

最大のポイントはbut many people choose not to protect themselves.の部分が会話文に含まれていない点です。そのため、原文を素直に読むと前半の”〜”はフィッシャー自身の言葉、後半は単なる事実のように見えます。

ところが実際にフィッシャーの研究を調べてみると、後半のbut many people choose not to protect themselves.もフィッシャー自身の意見であることが分かります。

また、そうした事実関係を知らなくても、この原文はScience Newsという雑誌からの引用であり、記者が取材した内容を書いた科学記事ですので、後半のbut many people choose not to protect themselves.もフィッシャーから取材して聞いた内容であることは容易に類推できます。こうした判断はかなり高度な裁量判断となりますが、もう一歩レベルアップしたい実務翻訳者にとって必須のスキルといえます。

以上まとめると、後半のbut many people choose not to protect themselves.もフィッシャー自身の言葉として訳すことが可能です。つまり以下のような英文とみなすわけです。

“We know [UV light is] dangerous,” Fisher says, but many people choose not to protect themselves.

過去にこの課題を出題した際、「原文後半の” ”が抜けていると考えられます」とコメントしてきた生徒さんが多くいました。もちろん、その可能性はゼロとはいえませんが、ここでは「前半はフィッシャーの言葉、後半は記者が取材時に聞いたフィッシャーの意見」と解釈するほうが自然です。第1パラグラフ第2文のin their new researchも同様です。ここは引用符で囲まれていませんが、訳例ではフェルドマンの語った言葉として解釈しています。

さらに、【訳例】では、会話文の前半と後半を1つにまとめ、途中で挿入されているFisher saysの訳を文末に置く訳文表現としています。会話文におけるこの訳し方は典型的なパターンですのでぜひ覚えておいてください。

なお、原文の[UV light is]の[ ]は重要情報を強調する表記です。日本語ではボールドなどの強調表示にすることはありますが、今回は何も処理していません。実際の仕事では顧客に確認し、その指示に従うことをお勧めします。

今回の課題はいかがだったでしょうか。最大のポイントは第3パラグラフにありました。多くの人にとって第3パラグラフはそんなに大きなポイントがあるように見えないと思います。ところが易しそう見える英文ほど意外と大きな落とし穴があるものです。

カンのいい生徒さんなら、「後半の引用符が抜けているのではないか?」という違和感をもつはずです。そこが出発点となります。現状の訳に満足せず、少しでも違和感があったら徹底的に検討してみるという姿勢が大切だと思います。

以下に訳例をご紹介します。

訳例

「なぜ人は休暇にビーチへ出かけるのか。なぜディズニー・ワールド(Disney World)はミネソタのように涼しい場所ではなくフロリダにあるのか。なぜ洞穴が観光名所としてあまり人気がないのか。彼らの最新の研究が、それらすべての原因を明らかにしています」とフェルドマンは言う。同氏は当該の研究とは無関係な人物だ。

太陽光や日焼けサロンで使用される特殊な光には、高エネルギーの紫外線が含まれている。紫外線が人体に有害だと知っていながら、人々は肌を小麦色に焼くために日焼けにいそしんでいる。その結果、皮膚癌になる率は上昇している。ボストンのマサチューセッツ総合病院(Massachusetts General Hospital)でがん患者の治療に従事している腫瘍学者デイビッド・フィッシャーはその理由を解明したいと思っていた。

「紫外線が危険だということを知っていながら、多くの人々は身を守ろうとしません」とフィッシャーは言う。

以下、次回の翻訳課題です。短い文ですのでぜひチャレンジしてみてください。

Q [英和課題] 以下の英文を「である」調で翻訳してください。

Turning on a faucet causes the water drops to form a single, smooth stream first.

This is called laminar flow.

Continuing to slowly turn on the faucet makes the stream twist.

This is called turbulent flow.

In still air, the smoke rising from a lighted cigarette produces a continuous straight stream of laminar flow.

As the stream rises, it begins to move in a zigzag way, eventually turning into turbulent flow.


ヒント


「乱流」(turbulent flow)と「層流」(laminar flow)の違いについて述べていた文です。上の図を参考にしてください(図中は訳す必要はありません)。「訳語の選択」を意識して訳してみましょう。

それでは、次回のこのコーナーでまたお会いしましょう!

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