| 翻訳の歴史はたいへん古いものですが、翻訳の作業はパソコンの登場で大きくスピードアップし、その後のインターネットの登場によってがらりと変わりました。それまでの翻訳者は数多くの辞書で単語を確認し、様々な専門書で用語を確認しながら翻訳を行っていました。1つの単語の訳語を捜すために何冊もの辞書を繰る必要がありました。原文に新しい用語や概念があった場合、辞書や書籍だけでは意味を正確にとることができず、ヒントを求めて何時間も資料を探ることも珍しくありませんでした。
現在の翻訳者は、主に電子辞書やインターネット上の情報を参照して翻訳しています。出てきた単語を片端から調べて訳語を確認するのも電子辞書ならほとんど時間はかかりません。辞書に載っていないような新しい単語や概念に出会っても、インターネット検索を行えばたいていの場合は用例がみつかりますから、辞書に載っていない単語でも楽に訳せるようになりました。検索エンジンでのヒット数をめやすに用語や表現の使用頻度も確認できるようになり、より適切な表現を選ぶことができます。厚生労働省や米国食品医薬品局(FDA)などの公的機関や、製薬会社などが発表する情報も自由に閲覧することができ、原文の内容をいっそう深く理解できるようになっています。
翻訳者にとってはありがたい変化ですが、これに伴って翻訳者に対する顧客の要求も上がっています。「これくらい調べられて当然」というレベルが高くなり、翻訳者は以前にも増して高い調査能力を持つことが求められるようになりました。インターネットを活用して優れた翻訳を行うには、情報の海から欲しい情報を取り出す技術や信頼に足る情報を選別する技術など、新しいノウハウが必要になっています。
この講座では、今の時代の翻訳者に求められるテクニックを実例を挙げて説明します。毎回1本の論文を取り上げて訳しながら、翻訳の技術や検索方法、役立つ資料などを紹介します。講座を通じて、翻訳への取り組み方を学んでいただき、きちんと裏付けの取れた翻訳をする技術を身につけていただければ幸いです。
|